
インフェクション78話
ネタバレ感想
らぎ姉とも未遂で終わり、悶々とした状態で研究所にやってきた晴輝。
小鳥を探して建物内を探していると、突然誰かに部屋に引っ張り込まれた。
それは、以前殺されかけたこともある外道の榎並夏苗その人だった。
78話 地下研究所にて
いきなり晴輝を部屋に引きずり込んだ榎並は、再会した感動を味わうことも、ゆっくり思い出話に興じることもなく、真っ先にスカートを持ち上げ、下着を履いていないあそこを人差し指と中指で広げて見せて誘惑してきた。
晴輝は照れや欲望の前にまず怒りがこみ上げ、声を荒げてすぐに彼女から離れ、部屋を出て行こうとした。
この保菌者騒動に巻き込まれてからこっち、榎並には出会った当初から悪女の本性を見せられてきたから、もうさすがに今は彼女の言葉を鵜呑みにすることもなかった。
思わぬ反応に彼女は背中に縋りつき、ただ二人きりで話したかったのだと涙を零し始めた。
さすがに力づくで振り解くのは躊躇われ、彼もドアノブに伸ばした手を下ろした。
すると、すぐさま彼女は涙を引っ込めて彼を部屋から出さないようにするため、自分の方が犯されたという状況にするつもりだと脅し、彼の選択肢を無くすのだった。
それは冗談だと言うが、もちろん信用できたものではない。
それはそれとして、彼が小鳥を探していると言うと、以前に手マンをして辱めた彼女はすっかり小鳥と仲良くなったなどと嘯き、案内してあげると言い出した。
もちろんそれも信用できたものではない彼は、これでもかと胡散臭そうに思っている顔を向けるが、彼女はニコヤカさを崩さずに、仲良くしたい理由を打ち明けた。
もう、同じ学校で生き残っているのは自分たちくらいでしょう?
そう言う彼女の上目遣いは、自分の利だけを考えて生きている気分屋の猫のように鋭かった。
彼女の部屋に移動して、お茶をご馳走されることになった。
彼はまだ彼女を憎み切れていなかった。
それは、保菌者騒動で彼女の悪女っぷりを目の当たりにする前から彼女を知っていたからで、菊池先輩といる彼女は、ただ彼氏と楽しそうにしている、どこにでもいる女の子にしか見えなかった。
それが保菌者騒動が起こるや、彼氏をも生き抜くための駒にして、少なくない人間を騙して死に追いやったところを見せられ、危うく自分も殺されかけた。
それが彼女の素なのか、生死をかけた状況に追い込まれて変わってしまったのか、判断できなかった。
彼からそんな風に思われていることなど知ってか知らずか、彼女は童貞卒業した?と訊いた。
さっき、スカートを上げて陰部を広げて見せたと言うのに、特に慌てることもなくすぐに怒って部屋を出て行こうとしたことから、既に女の子のあそこにぶちこんで経験して余裕が出たんだと感づいたのだった。
彼はポーカーフェイスを気取ることができず、お茶を吹き出してあっさりバレてしまう。
彼女が気になるのは、きららからぎ姉のどっちとヤッたかで、なんだかんだ言ってきららの方だと突きつけると、彼はすぐに表情で正解を漏らす。
いや、実は二人ともヤッてるでしょ?と言い直され、それにもすぐに顔に出てしまう。
彼女は彼が慌てる様をからかって楽しみ、そして二股はどうだと、また鋭く目を光らせた。
彼はやはり彼女のペースには勝てないと思った。
とにかく矛先を変えようと思い、彼氏といる時に感じていた幸せは何か訊いてみた。
その質問で彼が今何を悩んでいるのか敏感に察知した彼女は、逆にどう見えてた?と訊き返した。
彼は幸せそうに見えたと答えた。
彼女の幸せは、一瞬でも自分だけを見てくれていると感じた時だった。
それは女の子なら誰でも求めることで、その感じさせて欲しい長さは人それぞれだろうと。
そして、もう誠実に一人だけを完璧に幸せにはできないと彼に突きつけた。
なぜなら、もう女の肉の感触を知ってしまったから。
彼は彼女が捲くしたてる一つ一つの単語から、きらら、紗月、らぎ姉の三者三様の感触や温かさを思い出していく。
唇。
匂い。
自分だけに聞かせる声、見せる顔。
それらを知ったからには、他の女の味も知りたくなるものだと彼女は迫り、その魅惑的な顔を近づけて艶かしい舌を挿し入れようとした。
しかし彼は理性を保ち、悪女の誘惑を再び退けた。
だが彼女はプライドを傷つけられた風もなく、「人間万事塞翁が馬」ということわざの意味を話し、半沢教授に教わった言葉だと言った。
その無神経さに彼はまた怒りがこみ上げるが、彼女は一つの親子関係を崩壊させて、父と娘が死ぬ原因を作ったことをなんとも思っていないようだった。
それもなぜなら、人の世界とは自分が幸せになると同時に、誰かが泣いているのだからと。
言った通り、榎並は小鳥がいるらしい部屋に案内してくれたが、中から男の怒号が聞こえてきて、晴輝は急いで中に踏み込んだ。
すると研究者の一人が小鳥や他の小さな子供たちの声のせいでイライラするんだと言って、怒鳴り散らしていたのだ。
晴輝が入って咎めるとすぐに男は出て行ったが、小鳥たちの置かれている状況が電話で聞いていた通りなのは間違いないようだった。
天宮教授を信じてついている研究者たちと、彼に敵対している研究者たちの派閥に分かれていて、その敵対グループが天宮教授と親しくしている小鳥たちも疎ましく思い、あんな風に邪魔者扱いしているのだった。
その時、女性の研究者が部屋に入ってきた。
片目を髪で覆ったその女性はどこか感情が希薄そうで、らぎ姉よりも大きそうな胸の谷間を恥ずかしげもなく見せていた。
無言で入ってきた彼女はずっと何も言わず、淡々とコーヒーをカップに注ぎ、スプーンでかき混ぜ始めた。
榎並はこの女性が敵対グループのリーダー、鮫島教授だと教えてくれた。
鮫島はかき混ぜ終わったスプーンを乱暴にシンクの中に投げ捨て、そのまま放置してカップだけを持ち部屋を出ていった。
すると一人の少年がそれを洗い、元の場所に戻した。
少しでも役に立つところを見せようと言う健気な姿勢なのかも知れないが、それは大人が子供たちを萎縮させて取らせている行動にしか見えなかった。
晴輝は一緒に温泉街の安全地帯に行こうと誘い、子供たちは素直に喜びを表し始めた。
しかし、小鳥はここに残ると答えた。
感想
インフェクション78話でした。
仙台の命運が託されてストレスが溜まっているのは分かりますが、命からがら逃げ延びてきた子供に八つ当たりするなんて、人として大人として終わってます。
その代表格がなんともまあ魅力的なそそる女性だなんて、実は裏で天宮教授と男女の関係で繋がって演技しているんではないかと、勘繰ってしまいたくなりますね。