
ゴブリンスレイヤー外伝
19話20話ネタバレ感想
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仲間の仇を討つため、新人冒険者の戦士はロックイーター討伐隊に志願した。
ブロブも同時に襲ってくる死と隣り合わせの洞窟内で、先陣を切ってロックイーターに一矢を報う。
その勢いもあり、討伐隊は巨大モンスターを討取ることができたのだった。
そして辺境の村で、ゴブリンスレイヤーも戦っていた…
19話
外はまだ雷雨が続いていた。
扉を叩く音にただ一人気づいたのは、彼を礼拝堂まで案内した後にこってりシスターに叱られた、あの赤髪の少女だった。
今は、ゴブリンに備えている危険な状態。
外に出るなと言われていて理解もしていたが、少女は好奇心に勝てず、こんな嵐の夜に誰が訪ねてきたのか知りたくて堪らず、布団を抜け出した。
勇敢に箒を握りしめ、大人ぶって何の御用ですかと声をかけてみる。
すると、あのゴブリン退治に来てくれた冒険者の声が返ってきたので少女はパッと顔を輝かせた。

著者名:蝸牛くも 引用元:ヤングガンガン2019年1号
言い訳だけはちゃっかりすぐに思いつく。
どんな音でも扉を開けてはダメだと言われたが、誰が来ても、とは言われていない。
そんな屁理屈を頭の中で用意しながら、健気に閂を外して扉を開けた。
確かに声の通り、そこにいたのは鎧を着こんだ冒険者の彼だった。
ゴブリンをやっつけたと訊けば殺したと教えてくれるが、昼間とは違う様相に少女は少し怯えを見せた。
フラフラと疲れているようだし、泥と何かの臭いが交じり合って漂っている。
彼は治療薬か癒しの奇跡はないかと訊くが、あの院長は奇跡を授かっていないと返された。
そんなことを訊くくらいだから、少女も彼の疲れている様子が分かった。
この村を救ってくれた人なのだから、休んでいけばと促しつつ、それとも帰る?と訊いてみた。

著者名:蝸牛くも 引用元:ヤングガンガン2019年1号
彼は逡巡し、帰ると一言答えた。
帰る、帰る、帰る。
その言葉の意味を確かめるように三度繰り返した彼は何か納得したように、いつもの「ああ」と言ってから、帰るんだとしっかり答えた。

著者名:蝸牛くも 引用元:ヤングガンガン2019年1号
待っている人がいる。
それが彼の帰る理由だと分かった少女は満足したように、ニッコリ微笑んで頷いた。
フラフラしているのに、このまま帰しても大丈夫だろうか。
少女はそんな風に心配もしたが、帰りたい理由がある彼を強引に休んでいかせるわけにもいかないと思った。
だから、せめて村代表として、彼にお礼を伝えた。
彼は荒い息をしながら大丈夫だと返し、また嵐の中を歩き出した。
布団に戻って深い眠りについた少女は、朝には忘れてしまう夢を見た。
少女は夢の中で自分の背丈ほどの聖剣を抱えていたが、全く覚えていなかった。

著者名:蝸牛くも 引用元:ヤングガンガン2019年1号
ここは地母神の礼拝堂。
ロックイーターに一矢報いて気を失っていた戦士はそこで目を覚ました。
石造りの天井が視界に入るとすぐ、隣で休んでいた大剣使いが声をかけてきた。
直後、戦士は腕と足に激痛が走ったが、自分が生きていることを実感できた。
それよりも気になるのは、ロックイーターを倒せたのか、ここはどこなのかだった。
大剣使いはここが地母神の礼拝堂で、簡易の医療所にしてもらっているのだと教えた。
一人まだまだ余力を残していそうな大剣使いにもたれ掛かってぐっすり眠っているのが相棒の聖騎士見習いで、すぐ近くにもパーティーの仲間が深い眠りの中で疲れを癒していた。
戦士はもう一度ロックイーターについて訊ね、死んだと聞かされると強く拳を握りしめた。

著者名:蝸牛くも 引用元:ヤングガンガン2019年1号
大剣使いは、どれだけ激しい戦いだったかを知らない戦士に詳細を話し始めた。
全員の力を合わせ、最終的に止めを刺したのが槍使いの一撃だった。
決して自分の命を懸けた一突きで倒したわけじゃないことを教えられた戦士は、どこかがっかりしたように返事をした。
だが大剣使いは、いくら敵討ちという強い目的があっても、人生なんてままならないことばかりだろうと諭した。
体を預けて眠る聖騎士見習いの鉄兜は歪に溶けて形を変えている。
顔の傷はいずれ治ることもあるだろうが、それでも女の顔に火傷痕が残るのは忍びない。
そんな風に言いながら、大剣使いは綺麗なままの頬を突いた。

著者名:蝸牛くも 引用元:ヤングガンガン2019年1号
戦士は聖騎士見習いの彼女がなぜ、冒険者に身をやつしているのか考えた。
通常のルートで聖騎士を目指さないのは、それなりの理由があるんだろう。
そう思っていると、大剣使いは自分の人生もままならないことばかりで、それは誰だってそうだろうと言い出した。
それでも、ロックイーターに果敢に立ち向かった一番手は戦士だった。
それで充分、やれることはやったはずだと励ました。
戦士は目を閉じて考えた。
パーティーを組んでからずっと、リーダーとしてしっかり役目を果たしてきたはずだと。
あのロックイーターにたった4人で遭遇した時も、一人の犠牲だけで全滅は免れた。
敵討ち戦でも、反撃の狼煙を上げる一突きを食らわしてやった。
だからエルフに、これで勘弁してくれと祈った。

著者名:蝸牛くも 引用元:ヤングガンガン2019年1号
地母神の礼拝堂が医療所になっているということは、ここに仕える神官や見習いの少女が冒険者の世話をしているということだった。
忙しく立ち働く一人の少女は血塗れの包帯を抱えながら、薬草を取ってきて欲しいと頼まれた。
大きな声で返事をして、今抱えているタオルを置き、急いで薬棚へ。
踏み台に慎重に上って高い棚に手を伸ばし、何とか薬草を掴みだせて顔を輝かせた。

著者名:蝸牛くも 引用元:ヤングガンガン2019年1号
薬草を渡して、他の手が足りない場所へ行こうとしたその時、新たな重傷者が運ばれてきて声をかけられた。
鉄兜で顔が分からない冒険者に肩を貸しているのは、ほぼノーダメージの槍使い。
これから神官になりゆく少女は疲れ切っている冒険者を自分に任されたことに、驚きを隠せず戸惑った。

著者名:蝸牛くも 引用元:ヤングガンガン2019年1号
しかし、ただ休める場所を指示してくれればいいと言われ、コクコクと頷くことができた。
ボロボロで泥塗れで、自力では動けない冒険者。
少女は彼もロックイーターと戦った一人なのか気になって訊いてみると、槍使いがきっぱりゴブリン退治だと言うので、少女は驚きを隠せなかった。
彼は街の入り口で力尽きたらしく、偶然見つけた槍使いが運んできたのだった。
口が悪くもちゃんと指定の場所まで運び終えた槍使いは、少女に任せてどこかへ消えた。
少女は槍使いがロックイーターに止めを刺した冒険者かも知れないと思いつつ、このボロボロの彼をすぐ清潔な状態にしなければならないと考えた。
ただ、まだ自分にはできない。
さっきの先輩に指示を仰ぐと、そこまで重傷じゃないなら後回しだと言われてしまう。
また血塗れの包帯を渡されて洗ってくるよう言われ、すぐに取り掛かろうと洗い場に走るが、自分に託された彼を後回しにするのは気が咎めて仕方なかった。
包帯を洗いながら、何かしてあげられないのか考える。
血を落としては水を替え、落としては水を替えを繰り返すうち、汗が滴り落ちていく。
すると少女は、目の前でしているはずの水音がどこか遠くから聞こえる感覚に変わってくるのが分かった。

著者名:蝸牛くも 引用元:ヤングガンガン2019年1号
水の冷たさ、周囲のざわめき。
それらが直に感じられない気がしてくると、スッと自分の中から自分が飛び出して祈りを奇跡に変えていく。
地母神の教えを奇跡に変えた少女の祈り。
彼を助けたい思いが彼に届き、人知れず傷を癒していった。

著者名:蝸牛くも 引用元:ヤングガンガン2019年1号
とてつもない疲労感に襲われた少女は、息を荒げながらも洗濯の手を止めなかった。