
新世界より5巻ネタバレ感想
スクイーラ率いる塩屋虻コロニーが人類に反旗を翻した。
用意周到なバケネズミの奇襲に、決定的な反撃を加えられないばかりか、最悪の切り札を切られてしまい、人類の勝利は絶望的になる。
最早伝説のように語り継がれている悪鬼が、バケネズミの仲間として現代に現れたのだ。
第16話 劫火
開いていく扉。だが、開ききる前に悪鬼は踵を返して離れて行った。
まさに九死に一生を得たと思った矢先、森の方向に逃げていった医師の野口の悲鳴がこだました。助けに行っても犠牲が増えるだけだ。
泣く泣く船の方へ行こうとすると、繭から助け出された一人が怯えて外に出ようとしてくれない。仕方なく岡野が付き添い病院内に隠れることに。
早希と覚は肆星たちに悪鬼の存在を知らせるべく、船を飛ばしていく。そこで最後に見たのは、遠ざかる病院の上空で惨殺されていく野口の姿だった。
町に向かう途中、まだ子供の男女を拾った。
5人組の他の3人は殺されてしまったらしいが、なぜか少年は少女に罵詈雑言を容赦なく投げつけていく。
窘めると、幼馴染みだし何を言ってもこいつが超可愛くて超性格いいのは変わらないんで大丈夫ですと、のろけかどうかよく分からないことを言い出し、それを聞いた少女は真っ赤になって俯いてしまう。
ジェネレーションギャップに時の流れを感じる早希と覚。少年は新見翔、少女は坂井遥香と名乗った。
町は多くの建物が破壊され大被害を受けていた。
まず富子の元に赴き、悪鬼出現を報告すると、打つ手はないと希望を撃ち砕く一言を告げられる。人類には愧死機構と共に、人間への攻撃抑制も埋め込まれていて、悪鬼といえど人間に攻撃することができないのだった。
しかし、一つだけ可能性があるらしい。
かつて富子が若かりし頃に出現した悪鬼は、一人の医師によって殺されていた。その方法さえ分かれば町を救えるはずだと。
そうこうしていると悪鬼が来たと騒がしくなってきた。大怪我を負っている富子は、神栖町の未来を早希に託し、その場に止まった。
一人残った富子は、267年の生を思い返していた。
今この町に住む人々が誰の血を受け継いでいるのか、手に取るように分かっていた。同じ青春を過ごした友の9代目の子供達が、今生きているのだ。
そんな友や家族の子供達を易々と殺させはしない。友や家族と再会するのは、もう少し後でいい。
富子は全ての不浄猫を解き放ち、悪鬼襲撃を命令した。そしてあの時の医師が取った方法を、命をかけて試そうとしていた。
「鬼手仏心」
医師が人を治すために体を切り開くことがあるように、毒を以って悪鬼を治療すると自己暗示をかけて攻撃抑制を回避する。
しかし、命を賭けた一撃も、悪鬼には通じず、富子はあえなく殺されてしまう。早希に神栖町の未来を託したものの、早希にはきっとこの子を殺せないと感じ、長い生涯を閉じた。
第17話 慙愧
早希たちは祭り会場の広場に行き、肆星と合流した。そこには多くの住人も集まっていて、肆星が指示を出そうとした時、地面が陥没し始めた。
地面の中には多くの横穴が開いており、バケネズミが大量に出てきた。
八丁標の外からここまで穴を掘るとなると、10年以上かかってもおかしくない。スクイーラは一体いつから計画を立てていたのかと考えると、この広場に誘導されたようにしか思えなかった。
その時、悪鬼が数十人を宙に浮かせながら現れた。
バケネズミを同じように浮かせて対峙する肆星。悪鬼は宙に浮かせた人を、肆星はバケネズミをゴミクズのように呪力で殺し始める。
肆星が煙幕を起こし、鏡を使った分身を作り標的を何十体も作り出した。
呪力のレベルの差は歴然で、肆星は何本もの呪力の刃で悪鬼を貫こうとした。だが、やはり攻撃抑制が邪魔をして、ギリギリのところで無意識に止めてしまう。
人類最強の呪力使いでもなす術がなく、全滅を覚悟したその時、7匹の不浄猫がやって来た。
不浄猫に助けられる日が来たことを皮肉に思いながらも、猫たちの動きを悟られないように、呪力でサポートする早希たち。
煙幕に紛れ込ませ、悪鬼の目の前で光を生成し目を眩ませる。その隙に不浄猫が襲いかかった。
しかし、地中から悪鬼を守るようにバケネズミが飛び出した。猫がバケネズミを食い散らかしている間に、悪鬼は視力を取り戻し不浄猫を肉塊に変えてしまう。
唯一悪鬼に対抗できる戦力を失い、肆星も呪力に捕まってしまう。
悪鬼が肆星を蟻の足を千切るように弄んでいる間に、早希たちは大穴へと逃げ込んでいく。せめて、悪鬼の顔だけでも見ておこうとフードを外した早希。
燃えるように紅い髪とうねるようなくせっ毛。
無邪気な表情で人間を殺しまくった悪鬼は、間違いなく真理亜と守の特徴を受け継いでいた。
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