
インフェクション81話
ネタバレ感想
小鳥を連れ帰ることができず、少年を一人残して温泉地区に戻ってきた晴輝。
避難民たちの訓練も始まり、女性関係の悩みは解決の兆しもない。
そんな時に、蓮華がお風呂に乱入してきた。

81話 白状しなさい
振り返るとそこにいたのは、タオル一枚を巻いただけの蓮華だった。
何が目的なのか、彼女が自分に惚れる要素はないし、らぎ姉の側近だし、意図が読めないが、戸惑いと共に晴輝は薬を使ってらぎ姉をけしかけたことに怒りが沸々と再燃してきた。
しかし彼女は主導権を握らせないように、タオルの裾をチラリと持ち上げて牽制してくる。
彼が思わず目を逸らした隙に、彼女は彼が写りこむ角度で自撮りをし、それをネタに脅してきた。
一瞬で従わざるを得ない状況にされた晴輝。
さらに今度は絶妙なマッサージで肩のコリをほぐされ、怒るどころではなくならされ、薬を使った強攻策も全てらぎ姉のためだったと言われれば、感情的に怒りをぶつけることもできなかった。
彼女の目的はもちろん誘惑しに来たわけではなく、今調べていることに関して晴輝からも情報を得られないかと思い、邪魔者がいないこの時間を狙ったのだった。
蓮華は今高木を調べていた。
そこで友人である晴輝が知りうる限りの情報を訊いてきた。
高校1年で同じクラスになったが、なぜ武器の扱いに長けているのかは晴輝も知らない。
蓮華の調べでは軍隊生活経験があるレベルの使いこなし方だが、海外に出た形跡はなく、高校時代は帰宅部だった。
晴輝に因れば平日はたまにバイトをして、休日は渓流釣りに出かけるのが好きだったようだ。
人付き合いはそつなくこなすが一人の時間も大切にしていて、自然に囲まれていると幸せを感じると漏らしていた。
ある時に、晴輝は香里と紗月も一緒に連れて行ってもらったことがあり、その時に見せた高木の楽しそうな笑顔を思えば、とても人類に仇為すような奴には思えなかった。
しかし蓮華は、その休日の過ごし方も釣りのエピソードも信じずに、軍事訓練を受けていたんだろうと解釈した。
それは明らかに、晴輝が嘘を吐いているようにしか見えなかったからだ。
蓮華は既に高木の裏の顔を見ているであろう彼に、それでも信じると言える理由や、何かしらの秘密を迫るように詰め寄った。
すると晴輝は休日のエピソードを嘘だと認めたことを含みながら、約束したから言えないと答えた。
蓮華は一先ず高木の情報を聞き出す事を後に回し、もう一人疑っている人物がいると言い出した。
謎の存在の高木。
ただの高校生ではないらぎ姉陣営。
仮死から蘇った香里。
保菌者研究の指揮を取る天宮教授。
数々の危機を救った神城。
裏で暗躍する螢。
晴輝はその中に疑わしい人物がいるのかと訊いたが、蓮華はそうではないと答え、髪飾りを鋭利なナイフに変化させ、晴輝の首に当てた。
そう、この保菌者騒動に深く関わっている何人もの人間と全て関わり、その中心にいる晴輝こそが犯人だと疑っていたのだ。
一介の高校生でしかなかった晴輝が破竹の勢いで騒動から生き延びたのも、過剰な家族愛も全てが疑わしく思え、最悪、自己暗示で犯人の自覚がないのかも知れない。
晴輝はもちろん否定するが、最早蓮華の中では論理より勘がそう言っていた。
優秀には違いない晴輝の傍に、さらに優れた人間がこうも集まるのは、それこそ犯人自身もそうと知らず立ち回っていたからだと。
彼女は最早確信があると声を荒げ、ナイフを持つ手に力を込めた。