著者名:及川徹 引用元:マガジンポケット

インフェクション
94話95話ネタバレ感想

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天才的な香里の頭脳で保菌者騒動解決への光明が見えた後、晴輝は思いを寄せられている3人の女の子から、きららを選ぶことに決めた。

しかし、きららの姉の麗に相談すると、取り合えず日常でのデートを経験しなさいとのアドバイスをもらうのだった。

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94話

デート前日のうららに相談した時、晴輝はどうしてきららを選んだのか問われていた。

それはらぎ姉やうららに言われたのと同じ、死地を潜り抜けるためにあえて誰か一人を選ばず全員に生きる希望を与えていたが、もう少しで日常に戻れると分かった今、3股をかけるのはただのクズでしかないと思ったからだった。

するとうららは、その考えは違うんだと呟いた。

 

そして、きららとのデートの後はちゃんと紗月やらぎ姉ともデートしなければならないと忠告したが、そうする意味は仄めかすだけで明確にしなかった。

 

 

 

そしてデート当日の朝。

 

きららは手荷物片手にゆらゆらと落ち着きなく彼とおはようと挨拶を交わし、デートプランもない突然の誘いを迷惑とも嬉しいとも言おうとはしない。

ただ、所々漏れる小さな笑い声と満面の笑みを見れば、とても喜んでいるのが十分に伝わり、彼はやはりきららが可愛くて仕方なくなり早々に愛情と興奮が高まった。

 

 

今日のデートは、訓練や任務のためにこの秋保一帯をゆっくり見て回れていない彼のために、貸切家族風呂巡りを計画してくれたようだった。

 

川に沿ってホテルや旅館が建ち並ぶ秋保温泉。

その中でまだ掃除し切れていない家族風呂がある4軒の旅館を回り、掃除がてら使用の許可をもらっているらしい。

 

家族と言うより、カップルがイチャつく用だよね、と零すきらら。

そんな台詞を吐くぐらいだから、当然彼はそういう展開になるのを期待する。

その後で温泉と可愛い彼女の癒しデート、なんて上目遣いで言われたら、もうそのことしか頭になかった。

 

今日は日常のきららを知る機会にするんだと言い聞かせていたが、見せる笑顔が一々可愛くてどうしようもなかった。

 

 

 

一軒目の旅館に着くと、きららはそこに滞在している人たちとはもう十分に打ち解けているらしく、彼氏を連れてきたことでからかわれ始めた。それで以前から彼を温泉巡りに招待しようとしていたことが暴露され、またその照れる様子に興奮が高まった。

 

 

ちゃっちゃと掃除を終わらせ、お風呂に入る時間がやって来た。

 

あの夜、一緒に見張りをした夜以来の二人きり。

 

それが混浴デートなんて我慢ができるわけがないと思った直後、きららはあるモノを彼に手渡した。

それは体を洗いっこするスポンジやその後で使うゴムでもなく、メンズ用の水着だった。

 

もちろんきららもちゃんと水着を用意していて、彼も着るしかなく、なんかしっくりこないまま湯に浸かり始めた。

 

水着の展開は予想していなかったが、焦らす作戦だと思えばその作戦は十分に成功していた。

 

 

素晴らしい景色が見やすい外側に移動するきらら。

家族とも来たことがない温泉旅館。初めて来たのが彼氏なんて最高だと言いながら尻を突き上げて来るのは、最早誘っているとしか思えなかった

 

 

心地良さそうに尻を上げ、景色を眺めているきらら。

 

彼は横にスッと並び、彼女の名前を呼ぶと、上気した顔でずっと可愛いままの笑顔が返ってくる。

彼も上気し、久しぶりに張りのある尻に手を伸ばした

 

 

すると、条件反射のようにきららの手が尻に伸ばされた手を軽いツッコミ付で弾き飛ばした

拒絶する声は笑っているが、それが余計にどう理解していいか分からず彼は混乱の最中に陥っていく。

 

それを契機に二軒目の旅館に移動することになった。

 

 

 

その途中、偶然なのか高木と出会った。

 

デートについていっていい?なんて嘯く高木に、これも笑って拒否するきらら。

和やかに別れた後で高木が二人を見つめる邪悪な表情の意味するところを、二人が知る由もなかった。

 

 

 

次の山の上のホテルに向かいながら、何気ない話をしながら彼がスタスタと歩いているうち、いつの間にかきららを置いてけぼりにしてしまっていることに気づいた。

 

おんぶしようかなんて気遣いを見せると、出会ったばかりの頃、高校できららをおんぶし逃げた時に息を切らしたことを冗談半分にバカにしてくるので、今ならそんなだらしないところは見せないとムキになって言い返した。

すると、きららはまたどうしようもなく可愛くてずっと守ってあげたくなるようなことを言ってくれるので、的確な飴と鞭に彼はおもしろいほどに翻弄されていた。

 

 

二軒目の風呂掃除も素早く終わらせ、同じ部屋で着替え始める

 

お預けを食らわせておいてそんな無防備にされては彼も我慢の限界で、女子が憧れていると思われる後ろからのハグでシンプルに誘い、まずは可愛い胸をまさぐり始めた

言葉は拒否しているが、嫌よ嫌よも好きのうちに違いないと思い、ショートパンツをずり下ろし、可愛い顔とは正反対にエロい下着をつけた尻をさらけ出した。

 

 

どうもノッテこないなと思いつつ、それでもまさぐり続けていると、ついに大きな声で本気の拒絶をされ、さすがに驚いてそれ以上できなかった。

 

温泉だろうが混浴だろうが、きららにとってそういう行為はまた別で、水着を渡して着てもらったことがそういうつもりのないことの意思表示だった。

 

 

そう言われても、男の彼としてはその理屈は消化し切れず、少しはそういうことになっても構わないと思っていると思っていてもらいたかった。

だが、これ以上しようとするならデートを止めるとまで言うその少し怯えた表情を見れば、やはり本気なのだと理解しないわけにはいかなかった。

 

 

しかし、晴輝は男だった。

覚えたてでヤリたいざかりの健全な男子高校生だった。

性懲りもなく、空気を読まず、いやどうにかきららをほだしてエッチな展開に持ち込もうと思い、母性本能をくすぐれるつもりの作り笑顔で「ちょっとだけ」と望んだ。

 

すると朝からずっと可愛かったきららの笑顔はゴミでも見るような蔑んだものに変わり、彼は完全に選択を間違ったことを理解した。

 

 

服を着、荷物を持ち「一人でやってろ」と言い残し、乱暴にドアを閉めて帰ってしまったきらら。

 

晴輝は思い出した。

前日の夜を思い出した。

麗が頑張ってねと励ました意味を理解した。

 

大切な人を幸せにするのは命を守るより大変。その言葉が呪いのように頭に駆け巡っていた。

 

 

95話

晴輝は人生で生まれて初めてある恐怖に襲われていた。

 

のん気に香里と紗月と幸せな日々を過ごしていた日常から保菌者騒動に巻き込まれ、その中できららとらぎ姉を大切に思うようになり、それはそれで不幸中の幸いとも言える変化だった。

しかし今、きららに振られるかも知れないと思うと、震えが止まらないほどの恐怖に襲われていた。

 

 

あの軽蔑し切った表情を思い出すと、振られるどころか仲良くなったことさえなくなってしまいそうで、胸が締め付けられるようだった。

 

いや、まだ仲直りできるはず。

でも、もうあの笑顔をもらえないかも知れない。

 

初めて失恋するかも知れない苦しみを味わった晴輝は心臓が爆発しそうなほど動悸が激しくなっていた。ただ、初めてのはずなのに初めてじゃないような感覚だった

 

そうして何分苦しんだのか、きららを追いかけなければと我に返り、部屋を飛び出した。

 

 

 

外にはいない、電話も出ない。

なら、残りの掃除する予定のホテルを虱潰しに探すしかなかった。

 

 

だが、何て言って謝る?香里を宥めるのとは訳が違うだろうし、いいところでもあり厄介なところでもあるのが、きららの個性的なところだ。

 

そして方々駆けずり回って、外を歩いているきららに追いついた。

 

もちろん時間が経っただけで怒りの熱が冷めている様子もなく、鋭い軽蔑の視線は変わっていなかった。

 

初めての失敗と初めての謝罪にうまい言い方が思いつくはずもなく、ストレートにきららが可愛いから性欲が抑え切れなかったと白状し、頭を下げた。

 

それに対しての返答は「きもいこと言ってんじゃねえよ」だった。

 

 

失敗した謝罪の言葉についても謝罪すると、別に謝らなくていいなんて言い出すきらら。

 

怒りと言うより妙に神妙な表情に変わったきららは、保菌者騒動が終わったら彼と会わなくなるかも知れないと考えていることを打ち明けた。

 

 

未曾有の人災となった保菌者騒動に巻き込まれはしたが、その中で幸せに思える出会いもあった。しかし、やはり失ったものの方が多く、辛いことを思い出さずにいられない。

だから、それらを思い出すきっかけになる晴輝たちとの関係を絶ち切ることも考えていた。

 

 

衝撃の告白だった。

それは考えていない未来だった。

 

突然の告白をされた彼は「嫌だ!」と叫んだ。

しかし、心からの叫びもきららはあっさりと受け止め、さらに胸の締め付けを強くさせた。

 

 

 

普通とは思えない異常な苦しさを必死に耐えながら、前日に麗に打ち明けたのと同じく、保菌者騒動が終わればきららとだけ付き合うつもりなのを伝え、縋るようにずっと一緒に・・・と言葉を続けようとした。

 

しかし、その愛を伝える告白さえもきららの表情は和らがず、逆にさっきより軽蔑の色が濃くなっているようにさえ見えた。

 

 

きららを選ぶから許して欲しい。

そんな淡い期待を含んでの言葉なのを見透かされ、女子側にも同じく選択権があることを突きつけられた。

 

 

その通りだった。

 

すると、自分が誰からも選ばれないことを想像すると、胸の苦しみがどんどん増していき、その痛みが全て恐怖に変わった。

その時、麗が漏らした言葉の意味を理解し、この苦しさは先輩が保菌者にやられた時や香里が死んだ時に感じた苦しみと同じだと気づいた。

 

そう思うと止め処なく涙が溢れ、みっともないほどに号泣せずにはいられなかった。

 

 

さすがにきららに心配され、落ち着いて話せるよう椅子に椅子に座り、泣いた理由を話したが、ちょっと呆れられてしまう。

 

するときららは、彼が危険な任務をこなしている時は無事に帰ってくるかどうか心配で仕方なかったと、今の彼と同じ恐怖を抱いていたことを伝え、その挙句にデートに誘って喜ばせておいて、性欲で台無しにされたのだから怒って当然だと捲し立てた。

 

しかし、きららも怒りすぎたこと、彼の心の弱体化に気づかなかったことを謝り、彼の好きなところを顔を伏せながら挙げていった。

 

 

僥倖。

 

いきなり好きなところを言われた彼は戸惑いつつも伺いの視線を送ると、きららはデート最初の笑顔を見せてくれたのだった。

 

 

ずっと好きでいられるかは分からないという当然の不安は残しつつも、これにて仲直りは完了。

 

 

晴輝は自分の意志の弱さを今後知ることになるなど思いもせず、デートの続きをしようと嬉々として誘うと、既に掃除は終わらせたらしい。

ただ、掃除の後にどこに行くかは予定してあったという。

 

きららはその場所を言い渋り、なぜか顔を赤らめ出した

 

 

 

避難民の中には、まだ若い夫婦も少なくない。彼らが多くの他人と共同生活を送れば、自然、愛し合いたくても簡単にはできない。

だから、夜の営み専用の建物が用意されたらしい。

 

 

つまりきららは、なんだかんだデートの終わりにラブホテルの予約を取っていたのだった。

 

 

感想

インフェクション94話95話でした。

これはどっちもどっちと言えますが、まだ男の生態をきららが理解し切れていないので、彼が素直に謝って、その気がないなら思わせぶりなことは控えるようしっかり理解させないと、また擦れ違いが起きて早々に別れることになりそうですね。

非日常から日常に戻った時のギャップ。ゲレンデマジックと通じるものがありますね。

https://kuroneko0920.com/archives/43867