24話
二人はついに新しい命を授かった。
退院して一週間。
娘夫婦の家にいた雪映の両親は、天使の如く可愛い孫をデレデレの笑顔であやしまくっていた。
凛。
それが殺人犯の両親の元に生まれた子の名前だった。
雪映も我が家に新しい住人が増えたことの違和感にようやく慣れてきたというが、それも幸せが匂い立つような口ぶり。
当然睡眠時間は急激に削られて体力的にしんどい日々が続いていたが、すっかり育メンになっていた正隆は笑顔でこう答えた。
可愛くて堪らない我が子。
自分のことより最優先だと。

しかし、自分が抱いていない時はふっと俯瞰的な目線に切り替わった。
それはまだ、縄のイメージが脳裏に過っているからだった。
妻と義両親が凛を中心に笑顔でいる中、正隆はちょっと仕事だと断って二階へ。
物干し竿だけが残されたあの部屋に入り、押し入れにしまってある縄を取り出し、竿にかける。
全裸になるのは自らに恥辱を与えているのか、そこまでしなければ物足りないのか、正隆は疑似的な自殺未遂を繰り返していた。
殺人で繋がりを保ち、子供がそれを強固にする。
そんな夫婦があってもいいではないかと言い聞かせ、ギリギリまで自分を苦しめれば、消えることのない罪悪感から一時的に逃げられた。

笑顔の凛を写真に撮って幸せを感じた後に、一絞め。
ベビーカーに乗せて何でもない散歩でも楽しさを感じ、一絞め。
どんどん増えていく凛の写真フォルダを眺めて、一絞め。
そんな日々が早くも半年経っていた。
食事前に我が子の成長を噛みしめられる写真を眺め、いただきますと挨拶すれば、雪映との会話を楽しみながら箸と酒が進む。
結婚9年目にして、正隆は幸せの絶頂にいた。

穏やかな幸せが一年近く続き、もうすぐ凛の誕生日の頃、それはやって来た。
バースデーメニューの話をしている時にチャイムが鳴り、正隆は凛を抱いている雪映に代わって応対に出た。
柔和の表情で訪ねてきたのは、警察だった。
雪映も二階から降りてくると、彼らは萌の写真を示して、二年ほど前から行方不明になっているが、何か知らないかと質問した。

警察と言われた瞬間から動揺を顔に出した正隆は、助けを求めるように雪映を振り返り、質問に対しての返答を任せた。
肝が据わっている雪映は平然と「知りません」と答えた。
この辺りに新聞を配達していた萌。
警察はもう裏取りは十分しているのか、知りませんの一言では納得せず、集金等で顔を合わせているはずだと突いてくる。
それでも雪映は態度を変えず、覚えていないと言い返し、正隆の腕を握った。
そのせいか、正隆はまた縄の感触が蘇り、張っていた気が決壊して涙が溢れ始めた。
最早口を噤むのは不可能。
警察は疑いの目を強くし、大きくむせた正隆は雪映に謝った。
それでも雪映は、仕事による疲労のせいだとごまかし、横になろうと励ました。
お願いだからと、必死に目で訴えた。

正隆は涙で滲む目で雪映を見返し、次いできょとんとしている凛を見た。
雪映は凛のために取れる最善の方法を瞬時に導き出し、自分は知らないというのをアピールする意味でも、もしかしてその配達員を知っているの?と夫に訊ねた。
眉間に皺を寄せて訴える雪映。
正隆はグッと息を飲み、全部話すと警察に答えた。
感想
ただ離婚してないだけ22話23話24話でした。
ついにヤッてしまいましたね。
23話は予想通りに出産回となりましたが、精神的な強さはやはり母強しといったところか。
正隆が一人で罪を被るつもりでしょうが、果たしてうまくいくのか…
https://www.kuroneko0920.com/archives/63372




































