94話
女医が覗き見る中、堂島姉妹に追いついたメデューサたち。
先頭に立った千歌は感情が読めない表情でナイフをチラつかせる。
最早これまでかと思った瀬里はしかし諦めず、後ろに落ちている銃に飛びついた。
銃身を掴み、瞬時に振り向いた。
しかしその時にはもう、メデューサたちにゼロ距離まで追いつかれ、それぞれの得物を突きつけられていた。

さすがにこの状況で勝ち目があると思わなかった瀬里は、銃を放して無抵抗を示した。
喉元にナイフを突きつけた千歌はシンプルにゲームオーバーだと伝えた。
誰より小夜子が千歌がどうするのか息を飲んで見守っていたが、さすがに非情に姉妹を殺して欲しくなかった霧子が止めさせようとして声を出した。
だがその前にグッと強くナイフが喉に当てられた。
直後、真希の号泣と謝罪が耳を劈いた。

子供のように泣きじゃくる情けない真希に、命までは取らないように助けようとしていた霧子も戸惑うほど、真希は号泣して情に訴えた。
あまりにうるさい大声に溜息を漏らした千歌はナイフを離し、ほんのおしおきのつもりだったと明かした。
二人だけで勝手に脱獄を企てて実行に移したのはさすがに気分が悪く、本気でムカついた千歌だったが、初めから殺すつもりなどなかった。
真希の命乞いがなくとも脅すだけで許すつもりだった千歌は刃を鞘に収め、羽黒に帰ろうと言った。

小夜子はもちろん、誰も千歌の決断に異を唱えず、誰より霧子が姉妹が殺されずに済んだことを喜び、肩を抱いた。
予想外の結果に納得できない女医は姿を現し、命令を無視したメデューサたちになぜ裏切り者を許すのか問い質した。
殺人鬼の人格と100%シンクロしたはずの千歌なら小夜子さえ必要に駆られれば殺すはずだと思っていた女医は、自分の中では失敗作の堂島姉妹を殺せない道理はなかった。
その思いで千歌が姉妹を許したのを目の当たりにしても信じられず、今からでも遅くはないから殺せと迫り、乾いた笑いを零した。
千歌も自分が完全にシンクロしていることを認めたが、また指示には従わなかった。
姉妹の代わりに女医の首にナイフをあてがい、殺人鬼の自分たちは、殺す相手は自分で選ぶと宣言した。
純粋な殺意にさすがの女医も気圧され、言葉が出なかった。
ふっと微笑んだ千歌の表情に死を予感した女医。
しかし、ナイフで引き裂かれるより早く不意に殴られて顔を歪めた。

予期しない殴打であっさり女医を気絶させたのは吾妻だった。
殺される前に助けたのか、恨みがあるから殴っておきたかったというのが本音なのか、立場上女医が殺されるのはまずいと考えたのか。
それはさておき、殴ったのが自分だとバレた時のことを考え怖くなった吾妻は霧子に罪を被って欲しいと頼むが、当然断られた。
サンクチュアリ号はタイタニックのごとく暗い海に沈もうとしていた。
無事に救命艇に乗り込んで波に揺られていた仁奈は、霧子たちの無事を祈りながらも別れ際にされたキスの感触を思い出して頬を染め、きっと大丈夫だと信じた。
直後、海から浮上した何者かが仁奈が乗る救命艇に乗り込んできた。
船の方からでもなくただの海中から現れたのは、鮫さえ退けて生き抜いた神崎だった。

偶然仁奈の救命艇に這い上がった神崎は数奇な運命に驚きながら、上がる息を整え、まとわりつくタンクトップを脱いだ。
驚く仁奈の質問に、千歌に落とされたが5キロは泳いで辿り着いたと事も無げに説明し、船さえ沈めたメデューサたちに改めて恐怖を覚えた。
そして、組長さえ千歌に殺されたと聞かされ、今夜一番の衝撃を感じた。
組長だけでなく、幹部のボディガード全員が殺されたと聞くと、衝撃と共にリベンジのし甲斐を感じて笑わずにはいられなくなり、当面の身の振り方を実力を上げる武者修行にあてようと考えた。

そこで仁奈は、ヤクザに愛想をつかした神崎をあえて誘った。
父親が死に、武闘派の幹部が全員殺された今、天童組は舐められて食い物にされるのが目に見えているからこそ、仁奈は組を継ぐことを躊躇わず、残された組員や上を無理やりでも納得させるために、圧倒的に強い腹心の部下が必要だと思った。
だから再会したのも何かの縁だとばかりに、神崎を誘ったのだった。

神崎が父親の異常な性癖に辟易していたのを知っていたから、自分は下らない命令をしないことと、千歌との再戦のセッティングを約束した。
だから神崎は抜け目なく、給料の上乗せを要求した。
そして無事クルーザーに乗り込んだメデューサたちは解毒剤を打たれ、やっと一息つけていた。
ただ堂島姉妹には、脱獄を決意した理由を話す責任があった。
感想
サタノファニ92話93話94話でした。
既に明かされている限りでは、姉妹は陸に辿り着いていたので、殺そうとしていたのはメデューサの誰かなのかも知れませんし、もしかしたら神崎という可能性もありますね。
この流れなら、ヤクザの報復で堂島姉妹が追い詰められるのか…
https://www.kuroneko0920.com/archives/59197




































