73話
絵理沙は北欧のとある豪雪地帯にいた。
ドーム型の住居に一人、パソコンに向かって研究を続けていたのだが、少し肩の凝りを解したついでに、引き出しから注射器を取り出し、自ら腕に注入した。
直後、外からヘリの轟音が聞こえてきた。
何事かと思い絵理沙が外に様子を見に出ると、ヘリから降りてきたのは彼だった。

彼をここまで送ってきたのは絵理沙の相棒的ショートカット美女。
彼が絵理沙と話したがっているのを見かねた彼女は、二人はしっかり話し合った方がいいと判断したのだ。
絵理沙も黙って出てきた不義理を詫びると、彼女はちゃんと話し合った方がいいと絵理沙に促し、絵理沙もしっかと受け入れた。

久しぶりの二人きりの時間は、残り24時間だった。
寒風吹きすさぶ外から家の中に入った二人。
こんな僻地に籠って研究しているのは、ウイルスの動きが寒さによって変わることから、新しいデータを手に入れようとしてのことだった。
絵理沙が頑張ってきたことを知った彼は、こんな寂しい場所にいた苦労を思って表情を翳らせるが、絵理沙は空気を明るくしようと、オーロラが見えるからそう悪い場所でもないと教えてあげた。
しかしどうも気まずい空気が拭えず、会話を自然に続けられない。
その時、二人は訊きたいことを同時に切り出そうとして被り、相手に先を譲ろうとしたのも被り、変に息が合ってしまうところでも気まずいような嬉しいようなでこそばゆくなった。

取りあえず彼が先手をもらい、自分を避けているからロスアニアを離れたんじゃないのか?と訊ねた。
絵理沙は前と同じようにイチャラブしている場合じゃないからだと答えるが、彼は納得せず、既に見抜いていることを分からせるため、彼女の袖をまくって注射痕を露わにした。
そして重い病気かなにかだと思い、何を打っているのか強く問い質した。

全ては絵理沙が心配でならないが故のもどかしさ。
最悪の予想は言葉にしなかった彼の懇願に負けた絵理沙は、彼がコールドスリープについた直後からの話を始めた。

































