31話
受付嬢はカウンターに突っ伏して一言呻った。
横にいた先輩嬢はすかさず興味を示し、一体何の話だと顔を突っ込んでくる。
何も話していないうちからただの話のタネにされたくなかった受付嬢は躱そうとするが、先輩は敏感に例の新人冒険者のことだろうとニンマリ指摘。
あっさり顔に出てしまう受付嬢が何も言わなくても、既にいい仲でなかなか会えずに寂しがっているようにからかう先輩。
そうすれば受付嬢はあっさり、彼のことを考えていたのを自分から口に出してしまい、チョロさを思い知らされた。

アークメイジの依頼を彼に斡旋したのは他ならぬ受付嬢で、彼があくまで仕事で足繁く通っているのだろうことが分かっても、冒険者の間では、変わり者同士でお似合いだと噂されていて、心穏やかではいられなかった。
アークメイジは高名な魔術師の弟子だという話もある。
受付嬢が心の内でモヤモヤ考えているのを察した先輩は、冒険者にあまり踏み込めない仕事でも、やることをやれば後は思うままに接したらいいとアドバイスした。
改めて恋というワードを言われた受付嬢は、彼と出会って間もなくても、早々に恋しているのを自覚してしまうのだった。

一方、まだ薄暗い早朝に彼を見送った牛飼娘は、今朝もろくな会話なし、朝食も摂ってくれずにかろうじて家に牧場に帰ってくるようになったはいいが、それだけの彼との時間に悩んでいた。
彼と再会する前に最後に残っている記憶は、喧嘩別れした時の姿。
いつの間にかゴブリンスレイヤーと呼ばれるようになった彼との適度な距離が分からないまま、そろそろおじさんの朝食を用意しようと思ったその時、おじさんの嫌な予想を思い出し、顔が一瞬で火照ってしまうのだった。

彼は今日もアークメイジの水車小屋に顔を出した。
ドアをノックすればアークメイジが机の前から動かずにもう馴染みある返事で、彼を迎え入れた。
林檎酒とゴブリンの糞を持ってきたと言っても、アークメイジはやはり机の前から動かずにその辺に置いてくれと見ずに返し、モンスターマニュアルにおけるゴブリンページが僅かだとしても、いい加減なことは書けないという。
そして彼への報酬もやはり前を向いたまま指さし、巻物の束を示した。
どれでもいいと言うので彼は山の中から一つ取り、どんな魔法が記されているのか訊ねるが、アークメイジはやはり一切顔を向けずに、あの魔法使いにでも聞いてくれとにべもない。

彼はアークメイジがカードを触り続けているのを眺め、あの指輪が揺らめいているのを見てから、用は済んだとドライに返して背中を向けて出て行った。
街に戻った彼はすぐに酒場に向かい、一人静かにグラスを傾けていた魔女に近づくと、彼女も彼が言う前に用件を察した。

途切れ途切れに喋る変わり者の魔女が、アークメイジを変わっていると評しながら巻物を受け取り、キセルで一服吹かしながらぷつぷつと話しているうちに巻物の鑑定を終えた。
転移の巻物。
行き先を書けばこの世のどこでも行けるもので、白紙となれば相当な掘り出し物だという。
海の底、遺跡等。
便利だからこそ気を付けなければ死が待っていると忠告された彼は、確かにその通りだと理解し、知性があるからこそ魔女足り得る彼女も、実戦経験を経ていつでもどこでも知性を発揮できるようにしているのだろうかと考えた。
ともかく行き先を書かないと巻物は使えないと言われたが、彼はどこを書いていいか分からないし、そもそも呪文を記す技能がないと答えた。
すると魔女が胸の谷間にしまい込んだので、彼は印字もしてもらえるのかと期待した。

魔女もそうするつもりだったが、これからデートなので時間がかかると答えたのだった。
感想
ゴブリンスレイヤー外伝29話30話31話でした。
経験値も実力も乏しいようですが、なかなか魅力的なパーティーなので、誰も欠けることなくこれからも次に繋いでいって欲しいですね。
エルフとドワーフ娘のデレがかなり少なくてもツンなやり取りが微笑ましくて良いものでした。
https://www.kuroneko0920.com/archives/64471
https://www.kuroneko0920.com/archives/19767
































