169話
犯人は瞬間移動を駆使し、ながみんの肩に具現化した歯周りで噛みついた。
変異体と晴輝たちを戦わせ、進化情報を熟成させ、最後の変異体の情報を送り込むことで究極の進化生物を作るつもりだった。

噛まれたながみんは意味が分からず、くっきりついた噛み痕をジッと見るのみ。
これはもう手遅れだと判断した晴輝は、らぎ姉に離脱を指示し、轟たちにもバスに乗り込めと叫んだ。
止むを得ない苦肉の指示。
しかし、ながみんもいつもの緊張感のない声でそれに返事し、彼の後を追いかけたのだ。

噛みつかれたところが痒い程度でなんともなさそうなながみん。
それならそれに越したことはなく一緒に逃げようとするが、瞬間移動できる犯人の前では無力。
犯人は二人の行く手を遮ると、今度は香里が開発した治療薬が入った注射器を見せ、それを打ったかどうか訊ねた。
彼は形振り構わずショットガンをぶっ放すがまるで当たらず、犯人は陽気な様子で、治療薬の予防効果、注射器のフィルターが素晴らしいと賞賛した。
ともかく冷静に努めようと気を張る彼は、ながみんに殿を任せ、再び走りだした。
すると犯人はながみんを無視し、やっと犯人の計画を理解した轟に狙いを変え、また瞬間移動で背後を取ると容易く肘に噛みついた。

またしてもどうしようもないと見た彼はながみんに撤退を指示し、太刀打ちできない強さの進化生物ができるぞと焦らせた。
そんな中、轟が一番絶望していなかった。
仲間の脅威にはなるまいと覚悟を決めるや、首をくびって自ら止めを刺そうとするも、ながみんは逃げようとしない。
強い奴が生まれると言われれば逆に戦いたくなる戦闘狂の女子高生は、嫌だ嫌だと指示を撥ね返し、殺されることさえ厭わずに戦うんだという。

その願いも空しく、轟は躊躇なく自分の首をねじり折った。
圧倒的覚悟を示した轟。
しかしその覚悟の行動も空しく、ブランブラン下を向いていた轟の首が居眠りから飛び起きたように跳ね上がり、骨折が完治した。

進化情報の注入で覚悟の自害も許されない轟は、何が何でも死んでやろうと腹を裂いた。
二度も悲しい姿を見せられた彼は、まだ一人車に乗ろうとしないながみんを急かすが、何を言っても彼女は血塗れになる轟がどうなるのかワクワクして待ち続けた。

どんな死に方をしようが轟自身の未来に選択肢は一つしかなく、犯人が待ち侘びた最強の進化生物に姿を変えてしまうのだった。




































