16話
仲間たちの協力を得て、睦美は成体カマキリを体育館に誘い込むことができた。
ドアとカーテンが閉められた薄暗い館内、堂々とコートのど真ん中で待ち受けている睦美を見つけたカマキリは羽を伸ばして猛り狂い、一気呵成に襲いかかった。

睦美は冷静に後ろを気にしながら走り出し、敷かれているネットを越えたところでローリングダイブ。
カマキリは爪が引っ掛かってスっ転んでしまうと、四隅に繋げていたマットや跳び箱が宙を舞い、うまいこと簀巻き状態になった。
作戦成功だがカマキリは瞬く間にネットを喰いちぎり始める。
ただこれも想定内で、睦美が合図すると両側の廊下に待機していた新垣と刻がもう一枚ネットを放り込んで覆い被せた。

これも数分程度の足止めしかできないと予想している睦美は続けて、ハロゲンライトを点灯してもらった。
光量が最大になるまでタイムラグがあるハロゲン。
ネットから抜け出すのが先か、作戦完遂が先か。
二つがほぼ同時になった瞬間、睦美の指示で天井からCDのすだれが下ろされ、大型扇風機でゆらゆらと揺らされ始めた。
するとハロゲンのライトが乱反射して即席ミラーボールになった。

体育館を一瞬でクラブみたいにすることが、カマキリを仕留める作戦の仕上げだった。
安全になったと確信した睦美もゆっくり乱反射CDを眺めると、彼女たちと一緒に外に出た。
しかしカマキリは彼女たちに全く関心を示さず、ボケーッとCDを見つめ続けていた。
それはカマキリに寄生しているハリガネムシのせいだった。
カマキリに寄生してやがて産卵のために水辺に戻るよう脳を支配しているハリガネムシは、キラキラ光るCDやレーザーポインターを水面に太陽光が反射しているものと勘違いし、惹きつけられていたのだ。

憐れなカマキリに課せられた習性を利用した作戦のうち、カマキリが寄生されているかどうかは賭けではあったが、弱肉強食の自然界でカマキリが寄生されている可能性はかなり高い。
ハリガネムシは最初にカゲロウなどの水生昆虫に寄生し、成体となったそれらはやがてカマキリに捕食される。
体が大きい成体カマキリなほどカゲロウなどを捕食している割合が高く、それだけハリガネムシに寄生される可能性も高くなる。
更に共食いすることから、カマキリが寄生される確率は相当に高くなるのだった。

ハリガネムシに支配されたカマキリはこのままCDの光に魅入られ続け、やがてハロゲンライトの熱で蒸されたサウナ状態の体育館の中で自滅する運命だった。

































