206話
缶詰を開け、慎ましい晩御飯を作った。
その間に信はミルクを飲み切り、寝かしつけるのも大人しくスヤスヤと眠りについてくれた。
リゾットをあっという間に平らげると、神父が食器の後片付けを率先して始め、姉妹はゆっくりと会話を始める。
この過酷な日々でも風一つ引かずにきた信にきららが感心すると、麗は今にして思えば、この子も進化しているのではという。

もしかしての可能性の微笑ましさにほっこりもするが、神城の話題になると笑ってもいられない。
最早人類の枠からはみ出した神城は眠っているが、起きたら轟を殺しに飛び出すかも分からないので、今の内に彼の武力を頼って何をすべきか考えておく必要があった。
きららは当然、隔離地域外の安全圏まで連れて行ってもらうべきだというが、晴輝が隔離地域内にいると分かっているのだから、麗は妹と彼を会わせたいと思っていた。
いくら姉と甥を最優先しようとしても、彼に会いたい気持ちを隠しきれていないのが分かる麗は、素直になって神城に頼めばいいと促した。
しかし、愛だ恋だが永遠に続かないと知っているきららは、今の恋の波には流されないと言い返す。

あの大震災で多くのものを流され奪われ、だから傍にい続けてくれた姉を最優先するのは変わらざる意思だった。
それで自分の意見を押し付けていたのだと納得できた麗は、妹が恋に溺れた自分からしっかり学んでいることを理解した。
クズ男だと見抜けず、一時の感情に任せ、裏切られ、何人もの親身なアドバイスを撥ねのけさせた恋心。

そうして自虐する姉をきららが止め、やっと分かり合えたところで神父が口を挟んだ。
何か狙いがあるのか、麗の味方に回ったような立ち位置で、明日の朝までは晴輝と会うことも真剣に考えても損はないと促した。
きららは邪見な態度を取るが、神父は意に介さず、神は人を不完全に作ったという結論を繰り出した。

これは宗教勧誘か、保菌者騒動に対する犯人への皮肉か。
自分の不完全さに苦しんだ人間などいないの前提のもと、その不完全さこそ神の贈り物として愛すべきなのだと熱弁。
きららはヤク中のくせにとバカにし、生物の進化が証明しているのだからそんなものは詭弁だと切り捨てた。
しかし神父は生物は進化しないと言い切り、神の創造物が魂を変えることなどないと持論を展開。
それはダーウィンの進化論を否定する一派の常套句。
果たして進化論が正しいのかどうか、天宮渚なら答えを知っていそうだった。

ともあれ明日になって神城が目覚めたら、安全圏に連れて行ってもらうことで話がまとまった。
その頃、変わり果てた兵士の死体から黒い泥のカスが這い出ると、エリックの本体に戻り、情報を共有した。
そして渚は、一人で清々しい朝を迎えていた。

感想
インフェクション204話205話206話でした。
もう何が出ても驚かなくなりましたが、本当に際限なく次から次に新形態が現れますね。
https://www.kuroneko0920.com/archives/76907


































