24話
美琴が問い詰めると、天狗の面を外した男は予想通り貴彦だった。
この面を着けると元の自分じゃなくなって、何でもできるようになるという。
だから、自分の母親も手にかけられた。いや、彼は入れ替わり立ち替わり村の男の慰み者になっていたあの女を被害者だと分かっていても、母親だとは思えなかった。
そのせいで女を嫌悪するようになったのに、父親が美琴たちを閉じ込め、自分の嫁候補にしようとした。そうなるとうずめはきっと用済みになって始末されてしまう。
そう考えた彼は、だから女子大生たちを次々と殺していった。
うずめだけは、彼にとって汚れた女ではなかった。

再び天狗の面を着け、貴彦は襲いかかってきた。
うずめは殺されないから、一人で逃げれば身軽だとは考えたが、さすがにこの異常者のところに置いていけなかった。
しかし、抱えて必至で逃げる途中、洞穴の天井を踏み抜いてしまい、まっすぐに落ちてしまった。

次第に目が慣れてくると、いたるところに相当古いであろう屍がいくつも転がっているのが分かった。
うずめが貴彦から聞いた話だと、それらは面を着けておかしくなった人たちを閉じ込めた、なれの果てらしい。
ここに来るのが初めてじゃないらしいうずめの言葉に従って進んでいくと、外の光が見えてきて、無事に出口に辿り着いた。
しかし出た瞬間、そこを待ち伏せていたらしい貴彦がいきなり鉈を振り抜いてきた。
何とか避けたものの、今度は懐から包丁を取り出してさらに追いかけてくる。
以前にも先回りされたことを思い出し不思議に思ったのも束の間、目の前に崖が現れ、行く手を遮られてしまう。
うずめを奪われがむしゃらに手を振り回したら、相手の面を弾き飛ばし、その裏に隠れていた素顔を曝け出させた。
その顔は完全に正気をなくしていた。

顔を見られた貴彦は正気を取り戻したように顔を隠してたたらを踏んだ。
そのせいで足を踏み外し、谷底へと落ちていった。
ようやく最大の危険因子が消えてくれた。
美琴はうずめに声をかけ先を急ごうとしたが、なぜかうずめに背中を突き刺されてしまう。

25話
貴彦がうずめに執着していたように、うずめにとっても貴彦が生きる糧だった。
今よりさらに幼かった頃に両親から離れて、この村に閉じ込められたが、貴彦だけは優しく、好きなものを買ってくれ、いつでも遊んでくれ、うるさく叱ってくることもなかった。
ただただ甘やかしてくれる貴彦を、数年の間に彼女は妄信するようになっていたのだ。

うずめは我がままを押し通すように包丁を振り回し切りつけてくる。
その時、ヘリの飛ぶ音が聞こえてきた。
山火事で赤々と染まる空に、一機のヘリが旋回していた。
尚も切りつけてくるのを止めないうずめの、大事に抱えている人形を奪って谷底に投げ落としたら、ようやく勢いを失った。
しかし、すぐに更に憎悪を漲らせた顔になって、背中を突いてきた。
そして、ママみたいに殺してやると叫んだ。
彼女の両親が死んだ事故の原因はうずめだった。
本名は三葉といい、走行中の車の窓を開け、外に人形を出して遊んでいたのを母親に注意されて引っぱられた時、人形の足が千切れてしまった。
それに逆上して助手席の母親に掴みかかった時、運転している父親に強くぶつかったことで、
ハンドル操作を誤らせてしまった。
事故直後、母親はまだ生きており、三葉に助けを求めたにも関わらず無視してその場を逃げたのだった。
自分は悪くない。そう叫びながら美琴にとどめを刺そうとしてきた。
反射的に抵抗した美琴は気付けば三葉に馬乗りになって、胸を突き刺してしまっていた。
その直後、救助隊が彼女を発見した。

世間は八坂村の事件を大々的に騒ぎたて、唯一生き残った美琴は好奇の目に晒された。
三葉殺害の嫌疑もかけられていたが、心が擦り切れていた彼女は精神科の病院を退院して、自宅で静養を続けることになった。
自宅には、警察に預けた美琴の私物らしいものが届いていた。
中には、あの天狗の面が入っていた。
彼女は思わず手にとって顔にはめ、母親の背後に立った・・・
感想
屍囚獄5巻にて完結です。
貴彦が度を越し過ぎたロリコンだったとは・・・彼がいなかったら女子大生たちも早々に死ぬことはなかったと思いますが、そういった異分子がいたことで八坂村が壊滅したので、これ以上宇受売になる女性がいなくなると思うと、少しは供養になるでしょうかね。
最初から最後までおもしろかったです。
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