151話
小春の中にぶちまけた龍。
事が終わると早々にゆずの部屋に戻ろうとするので、小春は思わず腕にすがりつき、もう少し一緒にいて欲しいとねだった。

最近の小春の様子のおかしさに気づいていた彼は、オブラートに包まずそれを指摘した。
血の繋がったゆずと麟之助、龍と麟之助。
子供でも繋がりを持った3人を恨めしそうに見ていた小春。
それが寂しかったの?と訊く。

それとも自分以外の3人が幸せそうにしているのが、蚊帳の外に置かれているようで許せないのか?
でもそれは、ハレ婚ならこうなることも予想できないはずがなかったし、そもそもゆずを連れ戻すのに一番貢献したのは小春だった。
龍は交互に嫁と一緒に寝る。
その根本的なルールを破って抱かれたのが嬉しいのか?
だからもっと独り占めしたいのか?
それで、明日ゆずにどんな顔で会うのか?
矢継ぎ早に捲し立てられた小春は最後に、それでどんな顔で麟を抱くのかと訊かれ、詰問口調と彼の逃げを許さない鋭い目つきにすぐに言葉が出てこない。

結局全てを見透かされていて、その質問にどう答えていいか分からず、彼がルールを破ったことを責めて矛先を変えようとした。
しかし彼は悪びれもせずに、元々こうやって自由に接してきたしそれを隠していないと答え、小春にも同じような黒い面があることを突きつけた。
それはもはや隠しようもなく外に出ていると言われた小春は言葉を失い、抱かれた後の無防備な状態のまま全てを受け止めるしかなかった。

翌朝、小春が洗面所で顔を洗っているとゆずが声をかけてきた。
特に今までと変わった様子もなく、出かけるから麟を見ていて欲しいと頼んでくるゆず。
しかし小春は、店もあって急がしいから無理と返した。
断るには十分な理由だったが、言い方に明らかに棘があった。

それはゆずに十分伝わり、彼女は一瞬驚いてからじゃあ自分が連れて行くと答えた。
それに「うん」とだけ返す小春の背中は、今まで一番そっけなく壁があった。

セミの声がうるさい田舎の道を自転車で走っていると、刈払い機で草刈りをしていたうららが声をかけてきた。

木陰に入ると、うららは採れたてのトマトを持って来てくれた。
好きになった先生との思い出を糧に作ったのか、明るい笑顔でそのトマトは自信作だと話してくれる。
しかし、トマトが授乳中のママにもよく、冷やさないようスープとかにするのがおすすめだと教えてくれたせいで、一気に小春の中に黒い感情がこみ上げてきた。

仕事を中断し、わざわざトマトをおすそ分けしてくれたうららがゆっくり話をしようと腰を下ろしたタイミングで、小春は逆に腰を上げた。
トマトのお礼を言う顔は笑っていたが、これ以上話していたくないというオーラが見える気がするほどで、うららは呼び止めることができなかった。

キラキラ輝いているうらら。
母親としての幸せを手に入れたゆず。
それに比べて、小春は分け合うべき男を独り占めしたくて堪らない、性欲に乱れているだけの女になろうとしていた。
頭の中のゆずに本性を指摘されて、嫌われているかもしれないという考えが頭を過ぎった。

ゆずは市役所に行って手続きを済ませていた。
その帰り道で幼稚園児と小学校低学年くらいの子供を連れた若い母親と擦れ違った。
それがいつか見たハレ婚祭の参加者だと気づいて思わず声をかけ、相手を驚かせた。


































