52話
渡辺は今日もゆっくり起きて母親が仕事に出かけた後に家を出て、学校に行ったように見せかけるつもりだった。
なのに、目を覚まして身体を起こすと、すぐ横に猪川先生がいるではないか。

寝起きから驚かされた彼は仕事に出かけようとする母を呼びとめ、なんでここに先生がいるんだよ!?とタイトル回収。
まだまだ若そうな母は、息子が嘘を吐いて学校に行ったフリをしていたことを先生から聞いてもう知っていたので、息子の言い訳など聞くつもりはなかった。
後は愚息のことを先生に任せ、今日もその愚息のために勤労しに家を出た。
任された先生は、にたあっと微笑みかけて彼の肩に手を置いた。

この辺りは細い路地が入り組んでいる住宅街。
古き良き昭和の様相を残す町並みの中を先生は先を歩いてずんずん進む。
いつも彼が使っている道順とは違うが、子供の頃この辺りに住んでいた先生はちゃんと地理を心得ていた。
それならいいが、彼が4月に引っ越してきたばかりなのも先生として把握していることを恐ろしげに話すので、また彼は振り向き様の微笑みに恐怖してしまう。

車は通れない細い路地を進みながら先生は語る。
知らない道を冒険するのが好きなクラスメイトがいて、その子はある時、見たことがない世界が広がっているのを発見したそうな。
ただ、その場所は次の日になると、ただの空き地に変わっていたという。

そんな不思議な話を聞いた先生もその場所を見つけてやろうと思い、よくこの辺りを探索したのだが、やはり先生にも見つけられなかった。
もう大人になったし、冒険の真似事はしないのだともいう。
ただそれは冒険に魅力を感じなくなったわけじゃなく、その世界は大人が行くと戻ってこれない場所だと言われていたからだった。
そして、当時のクラスメイトがその世界を発見した場所は、今いるこの神社の辺りだった。

そう語った先生は、見たことがない世界に繋がっているらしい大きな木の根元にある隙間に頭を突っ込み出した。
そこが学校への近道でこの先はただの空き地だから大丈夫だと言うが、彼は怖くて仕方なかった。
なぜなら、オカルトの類は苦手だったから。
先生がいると余計リアルさが増して怖いと思った直後、先生は動きを止めてこの先には行くなと忠告してきた。
焦る彼に先生は、見たことがないものが・・・と答えた。

大人になった先生が見たものは、いつの間にか建っている新しい家だった。
先生は町も変わっていく世知辛さを感じながら戻ろうとしたが、頭からは突っ込めたがバックできない身体のサイズに自分も変わっている可能性を考えていなかった。
ギチギチに挟まった先生は大人になったから戻れないと一人納得し、また彼を恐怖させてしまう。

































