54話
不登校中の彼は、もちろん修学旅行に行くつもりなど全くなかった。
そして今日は修学旅行一日目の朝。
なのに彼は、猪川先生が運転する車の助手席に座って渋滞に巻き込まれているではないか。

なんでこんなところにいるのかと言えば、事の発端は数時間前に遡る。
まだ布団の中にいる時間帯にいきなり先生がスーツケースを抱えて訪れ、さあ修学旅行に行きましょうと言い出したのだ。
行くつもりはないと伝えていたのも関係なく、教師魂に燃えている先生は強引に彼を連れ出したのだった。

クラスメイトと仲良くなるにはいきなり旅行に飛び入りすれば万事OKなどと無茶振りをふっかけてくる先生の車に乗り、いざ空港へ。
そして渋滞に捕まり、飛行機の次の便にも間に合わず、新幹線も空席が見つからない。
進退窮まったはずだったが、先生はこのまま北海道まで車で向かうと言い出した。

冷静に15時間はかかるとちゃんと分かっているところがまた怖く、やっぱり大分イカれていると彼は思わずにはいられなかった。
すると先生は、とにかく学校が楽しいところだと思ってもらいたい一心で、この高校生活最大イベントの修学旅行は絶好のチャンスだと思っていることを打ち明けてくれた。
雰囲気は怖いが根はとても優しいと思い直した彼は、素直に先生の優しさに甘えることにした。

先生も彼が乗り気になってくれたことに相好を崩し、ダッシュボードにお菓子が入っているから食べていいと言ってくれる。
さて、中に入っていたのは弟がいる先生らしいたくさんの駄菓子だった。
するとお菓子に紛れて、備えあれば憂いなしの簡易トイレが混ざっていた。
これも弟用だと思った彼は納得し、大人が車の中で使うものじゃないと何気なく口に出した瞬間、先生はあからさまにビクッと反応した。
彼が冗談で心配した通り、先生は尿意を催しているようだった。

股間をもじもじ脂汗さえ滲み出てきた先生を心配し、彼は本当にまさかと思って、トイレに行きたいのか訊いてみた。
すると先生、急にスッと怖い笑みを零した。
一瞬怖かったが、それだけ限界が近いと思えば納得できた。

































