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20話②

ここは牛が多く飼われている牛飼娘のおじさんの牧場。

 

彼がいない今、牛飼娘は桶に張った水に自分の顔を映しながら長い前髪にハサミを入れようとしていた

 

しかし、くっきり映ってくれない水面を見ながらでは、伸びるまま放置していた長い髪をばっさりいくのに躊躇してしまう。

 

ただ髪を切る覚悟はちゃんとできていたので、髪がつかないよう下着姿になっていた。

著者名:蝸牛くも 引用元:ヤングガンガン2019年4号

 

 

ただ、やっぱりどう切っていいのか分からない。

 

ここに来て普段からこまめに切っておけばいいと後悔して、誰かに頼むにしても、その理由を思えば恥ずかしくて誰かに頼む選択肢は消えていく。

 

ただ、あの妖艶な魔女なら笑ったりはしないだろうと思えても、彼女でも恥ずかしさは変わらない。

 

 

もう一度前髪にハサミをあて、声をあげて勢いよくばっつんと切った。

 

髪が床にばらりと落ちて、水面を覗き込んでもやっぱりうまく切れているのか分からない。

 

ただ、前髪を一気にいってしまったのだから、このまま最後まで切りきるしかないと本当の本当に覚悟を決めた。

この気持ちはきっと、彼と同じようなものだと思えば、完全に迷いは吹っ切れた。

 

頬を叩いて気合を入れ、躊躇いなくハサミを入れていく。

著者名:蝸牛くも 引用元:ヤングガンガン2019年4号

 

 

耳を覆っている横の髪、背中を隠すほどの後ろ髪。

 

ジョキジョキと切り続けていくうち、彼の気持ちに思いを馳せたことで、自分のことも考えられるようになったんだと改めて思えた。

 

髪を軽くすれば心も軽くなっていく気がして、思い切ってばっさりチョッキンが完了した。

 

 

指を通して割といい感じに整えられたはずだと思いながら、散らかった髪を掃いて集めていく。

 

長い髪ならカツラ、網、お守りにできるはずで、そう考えると彼に持っていて欲しい思いがこみ上げてくる

でもそれもそれで、顔の火照りが抑えられず、じゃあ全く知らない人が持っているのを考えてもそれも無しになった。

著者名:蝸牛くも 引用元:ヤングガンガン2019年4号

 

 

その直後、重量感ある彼の足音がザっと聞こえてきた。

 

牛飼娘は驚いて思わず声を出した後、急いで服を着ていく。

 

急に髪を短くしたこの姿をどう言えばいいのかまだ考えておらず、顔を見るのさえ気恥ずかしさがある。

 

だが、牛飼娘のそんな状況など露知らず、激しい戦いを終えたばかりの彼は普通に帰るべき場所に帰ってきた。

 

 

彼は牛飼娘を見てすぐ、髪がかなり短くなっているのに気づいて「髪が…」と呟いた。

 

彼から切り出してくれたのはいいが、それでも恥ずかしい牛飼娘は頬を赤らめながら、何気なく切ったんだと答えた。

著者名:蝸牛くも 引用元:ヤングガンガン2019年4号

 

 

しかし、彼は相変わらず「そうか」と言うだけ。

 

さすがにその一言だけでは乙女心が満たされない牛飼娘は、「それだけ?」と訊き返した。

 

そう言われても何を返していいか分からない彼。

 

だから牛飼娘は自分から、似合ってるとか可愛いとかいう褒め言葉を例に挙げてみたが、もし言われてももっと顔が赤くなることだけは分かっていた。

 

ただ、例を挙げても彼にその手の機微は理解できなかった。

 

それでも彼は、「悪くはない」と言い直した。

 

背中を向けた牛飼娘はカッと熱くなる顔よ冷めろとばかりに髪をわしわしとかき回してから「そっか」と彼みたく答えた。

 

そうして少しトキメキを内に押し込んで、彼の琴線に触れるかも知れないシチューを作ってあげようか?と訊ねた。

著者名:蝸牛くも 引用元:ヤングガンガン2019年4号

 

 

すぐには返事が返ってこない。

 

テーブルを掴む手に自然と力が入り、放牧されている牛たちの鳴き声がはっきり聴こえてくる。

 

 

どんな目をしているか分からない彼の兜をしっかり見つめ続けていると、「ああ」と答えてくれたので、牛飼娘はガッツポーズをキメてすぐに準備に取りかかった。

 

 

5年ぶりのシチュー作り。

 

彼の姉に教えてもらったレシピの記憶も危うい。

 

それでも、これから料理も牧場の手伝いも生活の全ても一つずつやっていけば良いと思うと、肩から力が抜けていく。

 

そして、最高に気分が良かった牛飼娘は調理を始める前にもう一度振り返り、「おかえりなさい」と迎え入れた。

著者名:蝸牛くも 引用元:ヤングガンガン2019年4号

 

 

そして彼はまた、神様たちが遊んでいるだろうサイコロ遊びの駒の一つとして、盤上の一人になった。

 

ただ、彼がこれからどんな冒険を繰り広げて何を成すのかは、神様でさえも与り知らぬところだった。

 

 

感想

ゴブリンスレイヤー外伝4巻19話20話でした。

ここからゴブスレ側のパートに完全シフトしていきそうですね。

ここ何話から戦いばかりだったので、そろそろいたいけな子供たちや牛飼娘でも見たいと思ったところに、幼き勇者とせっせと働く女神官に癒されました。

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