93話
手足が長く、一気に引き締まったチョンギロウ。
チョーンチョーンとリズムを口で取ってから動いた瞬間、蛇ヶ崎は姿を見失った。
目にも止まらぬ速さで動いたチョンギロウが余裕たっぷりに声を出してくれたおかげで、背後に回られたことに気づけた蛇ヶ崎は、本当にギリギリで反動を利用して鎌を避けられた。
目で追えない速さは非常に不味かった。
上に逃げても、チョンギロウはすぐさま驚異的なジャンプ力で追撃をかけてくる。
上下左右とんでもない脚力で飛び回る姿に、筋力を自由自在にコントロールしているのだと分かった。

ドーム型の中にいる以上、チョンギロウにとっては全方位が足場になる圧倒的に有利な状況だった。
蛇ヶ崎は動体視力では全く追いつかないスピードの前にギリギリ避けるだけで精一杯なことを認め、自分の視力以外に頼るしかないと考えた。
チョンギロウが避けると分かっている弾を、一見形振り構わず撃っているように見せかけて、会場内のあちこちにめり込ませた銃弾から、キチガエルの熱源を感知して居場所を捉える作戦にシフトした。

蛇銃弾の眼に因り、頭の中にサーモグラフィーのような映像でチョンギロウの動きが流れ込んでくる。
あえて目を閉じて確実に動きを捉えてくれる蛇銃弾からの情報に賭けた蛇ヶ崎は、死角から振りかぶられた鎌を危なげなく躱すことができた。
苛立ったチョンギロウは更にスピードを上げ、次の一振りで確実に仕留めるために四方八方に飛び回って翻弄し始める。
蛇ヶ崎はそれもしっかりと姿を捉え続け、チョンギロウが飛びかかってくる動線を逃すまいと意識を集中する。
そして、いざ飛びかかってくるのを感知した瞬間、点ではなく線を狙って銃弾をぶっ放した。
超スピードで銃弾に向かっていくチョンギロウの頭部に確かに当たると思った瞬間、筋力のコントロールどころか身体全体の柔らかさも操ったチョンギロウはぐにょんと背中を折り曲げ、銃弾を躱したのだった。
勝ちを確信した蛇ヶ崎は万事休す。
かと思った直後、透明になっていた仲代が絶妙なタイミングでチョンギロウにタックルをキメてくれた。

ぶち切れて鎌を振り回したチョンギロウ。
最高のお膳立てに今一度ぶっ放した蛇ヶ崎。
蛇ヶ崎の腕が切り飛ばされるより一瞬早く放たれた銃弾は、やっとチョンギロウの頭にヒットした。

一発食らってしまえばどれだけ速くても関係なく、頭が爆散したのだった。





































