31話
追いかけてきた蔵前に入ったサクラは余裕で本城を押さえつけると、本城は確かに頭を撃ち抜いて死んだはずの女の意識があることに驚きを隠せない。
それはアツシも同じ気持ちだったがサクラの意識は確かに生きていて、それは殺される前に別の人間に意識を移したからだった。
彼が動画を配信する前、蔵前に追い詰められて路上で意識を失いかけた直前、その場にいた通行人に入り込み、事前に決めていた集合場所に向かったのだった。
皮肉にも彼だけが、恐ろしいほどの好意を寄せてくれているサクラが誰の身体に入っていようと見抜けた。
そうして満身創痍のサクラと再会した後、このビルに着くまでに色んな人間に乗り移っていき、最後に入ったのは彼の身体だった。
彼の中にサクラが入っているなど知る由もない蔵前は彼を捕らえたことで、簡単に身体を乗っ取られたのだ。
本城は一枚上手を行かれたことに焦るが、しれっと金で雇っている汚れ仕事専門の奴らをけしかけようとした。
そうすると本城の悪意が急上昇したのが丸見えな彼は、サクラに部屋の外の増援の身体を乗っ取らせ、本城の企みを潰してやった。
彼の能力までは知る由もない本城は、頑として数々の犯罪の動機など喋ってやるものかと身構えるが、彼は質問して数値の動きを見て図星かどうか判断するだけでよかった。
性根が歪み、腐り、ひん曲がって伸びている本城は全て自分の思い通りにならないと気が済まず、殺しなんて屁とも思わない救いようのないクズだった。
だから何とかこの場を切り抜けようとして、色んな女優を脅して囲っているから好きなようにさせてやると持ちかけた。
同じ空間の空気を吸うのも虫唾が走るクズだと分かった彼は反撃の仕上げに、本城をサクラに乗っ取らせて罪を洗いざらいぶちまけさせ、公開暴露ショーを全国に流してやったのだった。
記者たちも引くほどのおぞましい凶行の数々に世間は評価を手の平返し、アツシに向けていた悪意をそのままスライドさせていった。
