母の愛
恵介は咄嗟にしがみついて邪魔をした瞬間、銀と神主に案内されて地下牢に入り、初めてあの人を見た時のことを思い出した。
当時から変わらない化物じみた風貌、後藤家の象徴とされるあの人、村の神と憐み感謝した二人の老人。
恵介が怒り任せに殴りつければ、あの人は容赦なく鎌で振りほどこうとし、誰よりも純粋なましろが巨大な腕にしがみつく。

恵介に斬りつけ、そのままましろを攫おうとするあの人。
すると今度は有希が石をあの人の頭に叩きつけ、奪い返そうとする。
母の愛は恐怖を上回り、化物じみた男に立ち向かわせていく。

強かに殴られまくるあの人はその衝撃と母の姿に、子供の頃を思い出してついに言葉を放った。
カアチャン。
あの人の動きが止まった隙に殺すべきだと思える恵介はしかし、どうしても銀の亡霊と消えてくれない情で身体が動かなかった。
そうこうしているうちにあの人は有希を振り払い、ましろを奪い去ってしまうのだった。
そしてわらわらと残りの後藤家の面々が顔を隠した祭りの様相で現れた。
大悟は仕方なく連れ去られるが、恵介は睨みを利かせ、どうにか有希だけ放置して殺される謂れのない彼女を助けることしかできなかった。
銃声は村中に響き渡っていた。
それで笑えるのは、後藤家を蔑み憎み忌々しく思い怨んでいる者たちで、その中には今後の供花村を担う神主の宗近もいた。

当家に返り、いつまでも消えてくれない遺影の銀に当主として挨拶した恵介は、地下牢に拘束した大悟の最期の時を二人で過ごす体を装い、ましろ救出の協力を申し出た。
全て自業自得で殺されても文句の言えない後藤家の人間を大悟にも殺され、許せない気持ちも持っている恵介だが、それが大悟の娘だろうと死んではいけないと思っていた。

だから今度こそ、自分の父であるあの人を殺す覚悟を決めた。
一方、炎が煌々と焚かれ、後藤家が消えていくことに村人が狂喜乱舞している神社では、前神主が宗近に自分たちの昔話を語り始めていた。
後藤家の歴史は村の歴史そのもの。
かつては鬼とは正反対で美しく聡明で村全体のことを考えていた銀。
母になった女を狂わせてしまった歪な子供。
銀の死の真相と、また父の狂気を目の当たりにする娘。

自衛隊まで出動し、いよいよ国は一つの村を本気で制圧にかかった…
感想
ガンニバル9巻でした。
面白度☆9 愛憎度☆9
時代と閉鎖的な村のせいもあり、ジジババは若い頃、常軌を逸した行動に出るしかなかったんですね。
それで納得できるような悪魔の所業じゃないですが、稀代の毒親だったと言わざるを得ないですね。
https://www.kuroneko0920.com/archives/77224






































