162話163話
ただ無闇矢鱈と戦いを仕掛けるのではなく、あくまで戦わないとどうしようもない状況が訪れることを想定しているという意味だった。
そして現状のまま戦って勝てる見込みもないと言い切った。

それにまたヤンキーでしかない高崎が噛みつき、市原が窘める流れになるも、啓太は全滅にならないための策を考えるつもりだった。
それにはまず、ここで柱を起こして何が起きるか確かめる必要があった。
どうやって起こし、どれだけ時間がかかるのか、何が起こるのか、それを知るにはマオモの協力が必要不可欠になる。
その時、こうなることを予想していたマイルが母親に苦言を呈した。
しかも現代的なドスケベ黒ギャルにしか見えない、大胆なハミチク姿でだ。

サイコやまんじゅう、ガモウへの敵対心からとはいえ啓太と葵も助けたマイルだが、あくまでインゴ島の幹部の一人として、誰も島外から出すつもりはないようだった。
しかし娘がどうであろうと、マオモは血生臭い島の掟に盲目的に従うタイプではないようだった。

啓太の推理通りにここに柱の一つがあることを白状したマオモは、明日になったら見せてやると約束した。
夜中にトイレに行った啓太は、終わった後に柄杓で水を流し入れる手動水洗システムに文化レベルのギャップを感じながら、雑魚寝の部屋に戻った。
悪夢にうなされている高崎以外は静かな寝息を立てているが、葵も小さく震えて何かに怯えながら目を閉じていた。
その隣に静かに寝た啓太は、危険なフラグを立てながらも幼なじみへの深い愛を独り言ちた。

直後、実はまだ寝ていなかった葵はぐるりと彼の方を向き、彼はとんでもない恥ずかしさに襲われてまともに言葉が出てこない。
ただ葵は嬉しさどころか彼の自己犠牲精神を拒否し、一緒に帰らなければ意味がないのだと諭し、野暮な理屈を言わせまいと指を突きつけた。

でももへちまもなく約束して欲しい。
とにかく守ろうとする気持ちが大切な葵は堪らずポロポロと泣き出し、命を軽んじる言葉は聞きたくないんだと訴えた。
幼なじみ女子の涙には勝てない啓太が慌ててもう言わないと宥め、震える手をギュッと握って、ここまで希望を持って切り抜けて来られた理由を見せ、死なない誓いを立てた。

自分の髪留め。
命懸けの救出劇を成功させ、雰囲気たっぷりの深夜の誓い。
以前にも濃い体験を共有した二人は自然と顔が近づき、アキラとアレックスのような関係に進もうとした。

その時、ずっと悪夢にうなされている高崎のデカい寝言に驚かされて甘い雰囲気がぶち壊されてしまったが、キスのお預けもなんのその、笑顔を取り戻した葵は改めてみんなで帰ることを約束させたのだった。
































