エイギル最大の窮地
アゴールとカールが死に物狂いの気迫で指示を全うしようとしている一方、エイギルも無事にエイリヒの元に辿り着いて戦力に加わることができた。
戦況はなかなかに劣勢、鉄槍騎兵は仲間が作った死角を密かに通って来たらしく、一兵の練度も臨機応変な作戦も一枚上手だった。
かなり分は悪く鉄槍騎兵の戦闘力も凄まじいが、一騎当千レベルのエイギルに日和る理由も負けていい理由もなく、屈強な仲間たちを率いて突撃するのみ。

鉄鎧もろとも肉を切り裂く膂力で突進し、人外だと思われるほどの破壊力で切り開いていく。
セリアも遅れを取るまいと突っ込み、持ち前の細かなスピードでエイギルに続くが、前ばかり見過ぎて横の注意を怠り、無防備な横っ腹に槍が突き出された。
しかしそれを我が身で庇ったのは、セリア親衛隊のように振舞ってきた内の一人だった。

まさか自分の迂闊さで仲間を一人死なせてしまった驚きと不甲斐なさに怒りがこみ上げるセリアだが、後を託された親衛隊もその身を盾にする覚悟で、立派に逝った仲間を見送ったのだった。
やがて日が暮れかかる頃になってようやく戦闘は沈静化し、エイギルたちは何とか凌いで鉄槍騎兵も多く削ったが、両軍とも優勢とは言えない犠牲を払った。
初日の戦が終わり、エイギルが熟睡してできるだけ体力を回復していると、セリアに引っ叩かれて起こされ、敵が街を迂回して夜襲を仕掛けようとしているという。

暗いせいで規模は分からないが、とにかくエイギル隊で北門の防衛に向かった。
そして夜襲なら小規模の遊撃隊だろうと思っていたのだが、北門に集結していたのは主力の鉄槍騎兵だった。
街は陣地にしているだけで、奪えるものと言えば食糧くらいなものだとして、鉄槍騎兵を総動員する意味とは。
敵の狙いは突破力に優れた鉄槍騎兵で北門を突破し、街中を突っ切ってエイリヒ率いる本隊の背後を狙いつつ、同時に正面からも全部隊をぶつけて挟み撃ちにするつもりだった。

さすがにエイギル隊だけで鉄槍騎兵全てを返り討ちどころか押し止めるのもほぼ不可能、最善策は本隊と合流して撤退し、被害を最小限に抑えること。
王の目標は短期決戦での決着だが、こうなっては仕方なく国力を活かした長期戦で確実な勝利を狙うしかないとレオポルトが進言すると、エイギルは半分だけ同意した。
北門は自分一人で守るから、残りは本隊と合流して返り討ちにした後、逆に鉄槍騎兵を挟撃しろと。

いくら人外じみた強さでも一人で1500騎を相手にするなど正気の沙汰ではないが、エイギルは本気でその作戦を成功させるつもりだった。
残ろうとするセリアが力づくで連れて行かれた後、鉄騎兵は門を打ち壊して雪崩れ込んできたが、精々数人ずつの突撃なら、エイギルの一振り二振りで蹴散らすのも容易い。
ここから長く後世まで語り継がれるだろう、一人の男の獅子奮迅の孤独な戦いが始まる…

感想
王国へ続く道9巻でした。
面白度☆8 英雄度☆9
まさに主人公な戦いでこれだけ強くて背中で語れるなら、どれだけ女を抱いても当然と思える漢ですね。
































