血を這う亡国の王女3巻
憎き仇敵を倒し、港までもう少し。
狭い橋を渡り切れば間もなく、しかし数十人の追手が迫ってきており、全てを撃退する時間も戦力もない。
プリシラは亡命成功の瀬戸際に来ても、同胞たちを逃がすことを最優先に殿を務め、王女たる誇り高さで人々を励まして先を急がせた。
王家の紋章を受け取ったローラは先に船に着き、エビータ到着まで待ってほしいと頼むが、助ける方もギリギリの綱渡りをしている以上、天候の悪さもあり最重要人物だろうと刻限通りに出港する段取りを変えはしなかった。

最後尾のプリシラが橋に辿り着くと同時に、数十人の追手も間近まで迫っていた。
顔を焼いた元美少年兄弟の一人、ライールが橋の途中で足止めし、打ち漏らしをアベルが仕留め切ることにした。
しかし狭い橋で一度に相手する人数が減ったとはいえ多勢に無勢、二人の強さは並の兵士を遥かに凌駕するがさすがに捌き切れるものではなく、非情な一突きが貫いた。

鋼の意思と肉体は彼を踏ん張らせ、二突き目をぶっ刺されても行く手を阻むパワーは衰えない。
そして太眉ぱっつんちゃんが形振り構わず助けに行こうとするのも助け、ここを死に場所にする覚悟を仲間たちに示した。

豪雨で荒れ狂う川、確実に削られていく橋脚。
橋の崩壊を予見していたライールはできるだけ大勢の兵士を道連れにして、濁流の中に飛び込んだ。
命を賭してプリシラを助けたのは、ささやかでも彼女に心を救われたから。
遺されたもう一人も、一晩で彼女が特別になったジエゴも手を伸ばし、崩壊に巻き込まれかけたプリシラを引き上げられた。

今は悲しむ暇もなく、刻一刻と荒れて沖へと離れていく船を追いかけなければならなかった。
負傷者をまともに治療できる設備も技術もなく、動けるものは操船のためにできることをするのみ。
そうこうしている内に錨が引き上げられ、タイムリミットが訪れた。
プリシラを待ちたい女たちと、助けたいのは山々だが必要以上に危ない賭けはできない亡命国の面々。

そうして助けて欲しい者と助けに来た者たちで衝突が起きそうになるが、厄介な暴風雨が無理やりに協力させたことで、争いを無駄にさせた。
そして感情のない嵐は船を沖へと進めないと危険にさせ、プリシラたちを置いていく決断を取らせた。

直後、銃声が嵐を裂き、乗り込んだ女たちは桟橋にプリシラたちを見つけた。
まだまだ小舟で乗り込める距離、片割れを失ったこの国出身のアベルは一人で残ろうとするが、亡命の先導者プリシラが友好国でも助力を請い、それを断るほど彼は自暴自棄になっていなかった。
少なからずの犠牲と、新しい命を胸に新世界に続く小舟へいざ。





































