26話
いざ夫以外の男とセック〇して終わってみれば、背徳感にドキドキするようなこともなく、雪映は布団で前を隠して浮かない顔を隠すこともできなかった。
そんな彼女に構わず、前園は事後の煙草に火をつけて吹かして一服に入り、手際よく飲み物を差し出した。
しかし雪映は、もう安いトキメキなどまるで感じられず、手慣れた振舞いで差し出されたそれを断った。
前園も別段気にせず、一人でシャワーを浴びに行った。
部屋で一人になった雪映は改めて、自分が不倫してしまう女なんだと分かり、また気が滅入った。

ホテルの前で別れた二人。
また明日と変わらない挨拶を交わして背中を向け合い、駅に向かって歩き始めた雪映はあまりの罪悪感に不穏な視線に全く気付けなかった。
雪映がホテルから出てきた瞬間を目撃した萌は驚愕し、そして怒りを覚えて不倫相手の妻の後を尾けた。

電車に乗り、新聞配達区域の最寄り駅で降り、見慣れた夜の町並みの中、つかず離れずで雪映の後を追い、鞄から鍵を出して玄関ドアに挿し込んだところで声をかけた。
全く気付いていなかった雪映はいきなり声をかけられ、肩をビクっと跳ねさせてから振り向いた。
なぜ夫の不倫相手がそこにいて、声をかけてくるのか。

ホテルから出るところを見たと明かされた雪映は急に得体の知れなさを感じ、それでも動揺を見せまいとまた背中を向け、用件を訊ねた。
それで自分たちの関係も知られていると察した萌は、衒いもなく正隆と愛し合っていると暴露し、なのになんで別れないのかと問い詰めた。
今は不倫相手でも、夫婦の冷めきっている関係を聞かされている萌は表情でも煽るが、雪映は冷静に受け流し、夫にバラすと脅されても取り合わなかった。
女遊びに励む大学生とヤったばかりの雪映は、小娘に対して最後まで気丈に振舞ってドアを閉めた。
そしてまた一人になると、一気に大きなストレスに晒されてしまうのだった。
翌日、最終日の前園が職員室で実習終了の挨拶をした。
拍手を送られ、笑顔を返す大学生の男。

雪映も何食わぬ顔で拍手して若者の輝かしい未来を願う顔をしたが、そこから先輩後輩の少し年の差のある付き合いが始まるでもなく、それきりだった。
また一人の帰り道に戻った雪映は、相手にしてみればワンチャンを狙っただけなのだろうと思うしかなかった。
また、女としての悦びがない日々が続く。
きっちり離婚を申し出て話を進めればいいだけだが、それが堪らなくしんどいのが分かるが故に、億劫で仕方なく何年も過ぎ去った。
そんな風に改めて考えた帰り道、最悪のタイミングで正隆とかち合ったのだった。
ひと気のない夜道で遭遇した夫婦は、お互い気まずそうに視線を逸らし、一切言葉を交わさずに擦れ違った。
自分の不倫も正隆に知られたのだろうと察するしかない雪映は、不毛ですり減らすだけの結婚生活の意味を考えると涙が止められなかった。

その日、共通の口座からまた大金が引き出されたので、雪映は離婚を決意した。

































