75話
怜人がようやく初メイティングを経験した頃、日本にいる火野は一人の孕ませた女性と仲睦まじくベッドに座り、次世代に受け継がれゆく絵本を読んでいた。
それはお腹の中にいる我が子に聴かせる胎教を兼ねた、子供っぽ過ぎる彼女へのサービス精神。
まるで幼稚園児レベルで一喜一憂する彼女は可憐だが、二人でいられる時間の終わりが告げられると泣きじゃくる辺り、心配になるほど頭の中は子供だった。

そんな彼女を気にかけるのも、男の子を宿しているから猶更。
そして火野は、中学の時にプラトニックな恋愛をしていた彼女と重ねて見ていた。
子供っぽいゆかりの産む男の子が果たして、この世界で生きていけるのかはまだ神のみぞ知るところ。
そして寧々子に頼んでいた美來の情報は結局何も掴めないでいた。
火野が遠く日本から怜人も大人になった頃だろうと思っていたその時、彼は念願叶って絵理沙と一夜を共にし、朝を迎えていた。
しかし、隣で寝ている絵理沙は満足気で穏やかな寝顔どころか、苦しそうに喘いでいたのだった。

すぐにショートカットとビンビンが駆けつけて診てくれたところ、単なる過労からの発熱。
胸を撫で下ろせたのはいいが、ロスアニアでは実験準備が整い、彼は避けられない選択をしなければならなくなった。
実験に協力するのは腹が決まっているが、病気でヘリ移動は難しく、ようやく愛し合えた絵理沙を残していくのは忍びない。
彼はここに来て臆病風に吹かれそうになるが、ビンビンは祖母が示した二つの未来を改めて言い聞かせた。
愛する一人の女と添い遂げるか、多くの女とまぐわう修羅の道。
人類の存亡か絵理沙。
ビンビンは究極の二択を迫った。

彼はもちろん絵理沙を見捨てる意味ではなく、実験のためにロスアニアに帰ることを決め、一時の別れの前に彼女の手をギュッと握った。
朦朧とする意識の中、絵理沙はまだ彼に伝えていないとんでもない事実を口にしようとするが、罪深い神をも超えた所業の罪悪感に襲われ、とても言葉にできなかった。

































