129話
川釣りをしていたあやを見つけたカチュアも、竿を借りて遊び始めた。
しかし、なかなか難しいもので竿を上げるタイミングと食いつくタイミングが噛み合わない。
するとあやは的確にアドバイスをするが、最後は勘だという。
それならばとカチュアも素直に聞いて餌と魚影をしっかり見極め竿を上げると、見事に釣り上げることができ、随分可愛らしい笑顔を見せたのだった。

こうして息抜きできる竿は、九龍城視察時に購入したやつだった。
そしてまたあやが釣り糸を垂らし、得意の川釣りに耽り始めると、カチュアは真剣モードで明日がついに殴り込みだなと話しかけた。
それにあやは短く答えた。
いつもと違い感傷的になっているのは、昨日の戦いで教団側のメデューサもかなり強いと身に染みて分かったからだった。
カチュアは自分が殺されるかも知れない可能性、仲間が死ぬかもしれない不安、しかもそれが女医に対する私怨が原因の殺し合いともなれば、女医と龍野にこそ殺意が湧いていた。

その愚痴であやも龍野のことを思い出したその時、足を滑らせて川に落ちてしまうのだった。
その頃、千歌は魚卵をたらふく食べている最高の夢から覚めたが、隣の小夜子の寝顔を見てまたすぐ幸せを感じていた。
ずぶ濡れになってしまったあやは焚火でセーラー服を乾かしつつ、釣った魚も一緒に焼き始めた。
カチュアはそんな珍しくドジをする昨日からのあやの違和感を心配し、このヤマメに独り言を漏らすつもりで話してみればとおどけて促した。

するとあやはまず、ヤマメとアマゴをさっきから間違っていることを指摘した。
そしてせっかくのカチュアの厚意を受け取り、ぽつぽつと昔語りを始めた。
あやが育ったのは畑と田んぼばかりのド田舎で、バスもろくになく、学校も遠い村だった。
その村出身の母親との母子家庭だったあやは、父親の顔も知らないまま祖父母が亡くなったのを機に村で暮らし始めた。
風俗で生計を立てていた母は村に戻っても近隣の街で身体を売るしかなく、閉鎖的な村であやがイジメの的になるのは必然だった。
村八分状態で生傷が絶えなかったあやは、普段は差別している村の男たちがたまに家に来て母を抱くのが堪らなく嫌で、男も母も嫌悪していた。
そんな環境で友達がいるはずもなかったが、まさに野生児と言った感じで自然を相手にしていればいくらでも遊んでいられる子供だった。

外で健康的に遊んでいるうちに自然と剣術に興味を抱き始めた頃、幼いあやに性的欲望を向ける中学生連中が現れた。
いつもの日常でいきなり襲われたあやは、容赦なく暴力を振るわれて力で押さえつけられ、鬼畜外道の少年たちの慰み者にされそうになった。

どこが挿入すべき穴かも知らないまま欲望が抑えられないクズの指に汚されそうになったその時、田舎の畦道に不釣り合いなコートの男に助けられた。
神にも思えたその男こそ、若かりし龍野だった。
































