16話
美月は母に髪を梳かしてもらっていた。
ただそれは、娘を愛しんでしたことではなく、再婚しようと思っている村神さんとその息子が我が家に訪ねてくるからで、娘の存在が邪魔にならないよう、少しでも不安要素を無くそうとしてのことだった。

それが証拠に、母は美月に愛情を与えず感じず、彼女もそれは分かっていた。
村神圭司と康宏。
山本薫に美月。
全く似ていない母と娘に、康宏はストレートに全く似てないじゃんと一言目でぶちかました。
薫の母と妹は美人で、自分だけブスだったことで謂れのないない嫌な思いをしてきたようだが、彼ら二人の前では笑って見せた。
康宏は母になろうとしている女性の強がりなど無視して、美月に部屋を見せてくれるよう誘ってリビングから連れ出した。
美月の部屋は家具や私物が一つもなかった。
彼女はそもそもこの家に住んでおらず、叔母さんの家で暮らしていたのだ。
それは、絵本作家である薫が娘の存在が仕事の邪魔になるからと言って、一緒に住む事を拒否したからだった。
薫は自分の娘に関わらず、目が不気味だと言って嫌悪感を隠そうともしなかった。

自分がおかしかった時期にできた子供だから、外国人の血が入っているかどうかも分からないと、結婚しようとしている圭司に向かって打ち明ける。
自分はヤリマンでしたと言っているのと同じだと気づいているかは、いまいち分からなかった。
廊下で聞いていた美月に言わせれば、母の言葉は話半分に聞けばいい程度のものだった。
美月はどうせ母の下らないおしゃべりに音を上げて、結婚はしないだろうと考えていた。
しかし康宏は、薫がブスで性格が悪かろうとも間違いなく結婚すると言い切った。
なぜなら、圭司の目的は美月を娘にすることだったからだ。
薫と圭司はすぐに結婚を決め、4人で同居することを決めた。
美月は叔母の家で、優吾と彼の部屋で別れを惜しんでいた。

しばらく会えなくなるだろうから、今日こそ最後までしようと誘って、彼の上に跨って服を脱ごうとした。
その時、陽史が入ってきて薫が急かしてるから早く行けと、無情に言い放った。
優吾と叔母に別れを告げ、イライラして運転席に座っている母の車に乗り込んだ。
流れる景色を見ながら
「ねえママ。私のこと好き?」と訊いたが、「運転中に話しかけないで」と返された。
そして、ちょっとしたことで康宏はやっぱり結婚反対だと騒ぎ出し、薫はおろおろ慌てふためいてしまう。
その滑稽な姿に美月は思わずニヤケた。
それを見咎められ、容赦なくグーで殴られてしまうのだった。
そうして、同居生活が始まった。


































