ベテラン登山者
宮田が叫んで止めるのも聞かず、早乙女は最後に不器用な笑顔を見せて飛び降りた。
その直後、ライトが電池切れになり、宮田や林は涙を流した。
夜が明けたころ、早乙女は呼びかける声で目を覚ました。
樹木がクッションになって奇跡的に生きていた彼を起こしたのは、行方不明になっていた田中だった。
著者名:粂田晃宏 引用元:モンキーピーク3巻
矢ノ口落としの下で猿に襲われたものの、命からがら崖を下りて逃げ切ったらしい。
早乙女は満身創痍なのにも関わらず、落ちてきた崖を上ると言い出した。
あの時、猿に組み付いた時に感じた感触を、どうしても小屋で助けを待っているメンバーに伝えなければならないと思った。
昼前になっても助けが来る気配はなく、小屋の中は徐々にイライラが募っていた。
腹がすいた、助けはまだかと不満ばかりを漏らす南。
氷室は自分の立場も忘れて泣き喚いているだけ。
その時、中岳小屋がそんな追い込まれた状況だとは知る由もないベテラン登山者兄妹が、小屋に到着していた。
著者名:粂田晃宏 引用元:モンキーピーク3巻
外に置かれている3人の遺体と、中で拷問らしきことがされていたのを見て、登山者兄妹は異常事態であることを察した。
とにかく、兄の方が119番に連絡しようとして衛星電話を取り出した。
その時、氷室があまりにも喚くものだから下ろしてやったことが仇となった。
彼は男が電話を取り出したのを見て突然走り寄って奪い取り、逃げようとした。
しかし、すぐに安斎が自慢のタックルで取り押さえた。
だが、倒されながらも電話を投げ捨て、あっけなく崖の下に落ちていってしまった。
他の電話をだしてくれと騒ぐメンバーに、あれしか持っていないと言ったのは、兄の八木満、妹は薫。
著者名:粂田晃宏 引用元:モンキーピーク3巻
そこでようやく、二人がただの登山者だと彼らは理解して希望を打ち砕かれた。
そして、兄妹の話によれば、藤谷製薬の社員が遭難しているというニュースは世間では一切流れていないことが分かった。
つまり、まだこの中に潜んでいる猿の仲間が、登山の日程を改竄して方々に連絡していた可能性が浮かび上がってきた。
待っていても当分救助は来ない。
しかも、氷室以外に猿の仲間がいるかもしれないことで、絶望感で一気に包まれた。
八木兄妹は彼らの話から、自分もその猿と同じものを見たことがあるかも知れないと言う。
江戸時代に書かれた書物に出てくる猿神かもしれないと言い出すが、そんな話より今は彼らに下山してもらって救助を呼んで来て欲しかった。
著者名:粂田晃宏 引用元:モンキーピーク3巻
それを伝えると、兄妹も死人が出ている以上、そうするつもりだったと言ってくれ、さらにこの辺りの山は庭みたいなものだと言って頼もしかった。
しかし、人が確実にいる麓までは10時間はかかるので、出発は早朝になった。
だが、藤柴は二人を信用し切れないでいた。
兄妹というより恋人のような距離の近さに、得体の知れない胡散臭さを感じていた。
著者名:粂田晃宏 引用元:モンキーピーク3巻


































