日本海側の曇りがちな空に比べて、東京に近づくほど空はすっきりと晴れ渡っていった。
一は自分の生まれ育ったマンションを外から眺め、あの辺の12階だと初穂に教えた。
彼女は無邪気に道端で配られていた風船を二人分もらい、はしゃいでいたが、彼は父からの留守電も無視して、近くのカフェで休憩している時に、短くパッツンになった彼女の髪形を可愛いと褒めた。
彼女は照れて返事ができず、ふと力が緩んだ指先から風船が逃げ出した。
著者名:松本剛 引用元:ロッタレイン3巻
ひとまずウィークリーマンションを借りた。
長岡の一軒家に比べるまでもなく狭かったが、二人で生活する分には十分に思え、初穂は入るなりベッドにダイブしてはしゃぎ続けた。
自炊して節約するために買い物に外に出ると、きれいな夕焼けが見えた。
小さな部屋の中にキッチン、バスルーム、ベッドにテーブルにテレビが無駄なく配置されていて、初穂が浴びるシャワーの音がどこにいても聞こえてくる。
彼女がバスタオルを一枚巻いただけの格好で出てきて、一は何でもないような風に装いながら、風呂上りの香りに理性を保つのが精一杯だった。
著者名:松本剛 引用元:ロッタレイン3巻
彼女にベッドを譲り、彼はソファに身を横たえて電気を消したが、やはりどうにも狭くてなかなか寝付けなかった。
すると彼女はこっちに来てもいいよと言ってきた。
しかし彼は断り、おやすみと返した。
彼女はずっと天井を見ていると、しばらくしてから彼のうなされる声が聞こえてきた。
一緒に買い物に行けば親子に間違えられ、馴染みのない鎌倉花火大会の中継をテレビで見て長岡の花火が近い事を思い出す。
初穂の勉強を見てやった後に、ベッドに寝そべって腰を踏んでもらうと気持ちよかった。
どうしようもない年齢差はつかず離れず常に付きまとい、初穂も重荷になっていることが分からないでもなかった。
でも、腰に感じる重さだとごまかして、彼は重くないよと答えたし、そう思いたかった。
著者名:松本剛 引用元:ロッタレイン3巻
その日の夜。
またうなされて夢の中で涙さえ流している彼の唇と自分の唇をそっと合わせた。
翌朝。
もう焦がす事の無くなったレンジのトースターで焼いた食パンを食べた後、一は友人のツテで新しい仕事の話を聞きにいった。
彼は良さそうな仕事が見つかり、お祝いに花火を買って帰った。
しかし、狭い部屋のどこにも初穂がいないのはすぐに分かった。
セミの鳴き声に急かされるようにクローゼットを調べると、彼女の制服が無くなっていた。
その日のうちに児童相談所の人間が訪ねてきて部屋を探し始めた隙に、車に飛び乗って長岡を目指してアクセルを強く踏んだ。
だが向かっている途中で父から電話がかかってきて、初穂は自分の意思で帰ってきて、自分の意思でオーストラリアに行く事を決めたと告げられた。
父は一方的に謝ってきたが、今更何を言われても初穂がいなければ意味がなかった。
彼はハンドルに額を打ちつけまくってから泣明かし、一晩過ぎてからゆるゆると長岡に向かった。
全国的に有名な花火大会はもちろん観客で溢れていた。
一は初穂と呟きながらフラフラ歩いていると、本当に初穂の横顔を見つけた。
彼が初穂を見つけたのに澄也も気付き、彼も澄也に気付いた。
彼が初穂に辿り着く前に澄也は人ゴミを縫って途中で立ちはだかり、彼が驚いている隙に明確な意志を持って階段から突き落したのだった。
著者名:松本剛 引用元:ロッタレイン3巻
皮肉にも、血を流して倒れている彼のために手を差し伸べたのは、年の近い、はっきりとアプローチしてくれていた蛍子だった…
感想
ロッタレイン3巻にて完結です。
面白度☆8 理不尽度☆9
16歳17歳年下の中学生とは法律的にアウトですが、これは父親が身勝手すぎましたね。
初穂に妖しい魅力がなかったらそもそもガキにしか見えなかったかも知れませんが、男の本能は若さを求めるから仕方ない面もあると言っておきましょう。
とにかく、担任は人にものを教える器じゃない。
そして、初穂に一番惹かれていたのは澄也だったのかも知れません。




































