54話
彼は瞬時に手を伸ばしたが、彼女に腕を掴まれて届かなかった。
彼女が諦めたように、後10分だけと呟いた直後、別のカップルに彼は気付かれてしまった。

彼は鍵を掴んで彼女を突き飛ばし、何も言わずに走り去った。
残された彼女は「バカアアアアア!」と叫ぶしかなかった。
彼の逃亡は一気に知れ渡り、みづえとまぐわっていた天狗父も澄子が犯されたのを知り、頭に血を上らせて彼の後を追った。
彼は蔵の鍵を開け、中にいる春子の腕を掴んですぐに連れ出そうとしたが、彼がイチモツを丸出しにして先っぽから汁を滴らせ、女の匂いをさせていることに彼女は気付いて身を引いた。
抵抗しようとする彼女に苛立ち、彼は服をめくり上げて胸を掴み、下着の中にも手を突っ込んで、スケベだから何だってんだ!と凄んで黙らせた。

完全に変わってしまった彼に春子は仕方なく従いつつも、死ねと罵倒した。
55話
二人は宿へ直行し、春子を先に行かせて彼は裏口に用意していた荷物を取りに行った。
その時男に見つかってしまい、彼は瞬時に刀を抜いて首に斬りかかった。
容赦なく刃を滑らせたそれは峰打ちだったが、男は嗚咽して蹲り、その隙に再び逃げた。
村中はまるで殺人犯でも追いかけるような大騒ぎになっていたが、峰打ちは単なる偶然だった。
集落を抜けた所で春子と合流し、街灯が一つもないバス停までの一本道をひたすら走っていると、後ろから車に乗った男たちが追いかけてきた。
二人は森の中に逃げ込み、追ってきた一人に刀を振り回して威嚇すると、男は足を滑らせて暗闇の中を落ちていった。
彼は男が落としたライターを拾い、再び逃走を開始する。
運転していた男は車に戻り、橋に先回りしようとしていた。
そこに澄子が現れ、車のフロントガラスを鉄パイプで叩き割り、シフトレバーをむちゃくちゃに叩き始めた。

後続車がつかえだした所で下ろされると、暗闇の中へ姿を消した。
56話
男たちは車を下りて走って追いかけてきた。
そう時間はかからずに二人は小さな橋の前で追いつかれ、春子を先に行かせて彼はその場に留まった。
刀に服を結んで火をつけ、炎の刃で男たちに切りかかり、先頭にいた男は避けた拍子に橋の下に落ちていった。
服がすっぽ抜けると彼は再び逃げ出し、そこら辺にある地蔵か墓石かを蹴り落として、とにかく捕まらないよう抵抗を試みた。
追いかけてくる男たちの先頭は、いつの間にか澄子の父親になっていた。
彼は必死に橋って逃げたがついに追いつかれて肩を掴まれると、反射的に振り返って刀を振った。今度こそそれは峰打ちではなく、父の腕の肉を裂いた。
しかし、何十年も手入れされていなかったそれはほとんど肉に入らずにすぐ止まった。
彼は顔面を蹴りつけられて倒され、また村に戻されるのを覚悟した。
その時、斜面の上から黒い肩掛けのようなものがとんできて父の頭に降りかかって視界を塞ぎ、彼はその隙を逃さずに体当たりで斜面の下に突き落した。
刀を拾い走り出して、もう橋まで数十mまで来た所で、誰かに腕を掴まれた。
また反射的に振り返って刀を振ると、今度は綺麗な袈裟懸けに相手の着物を斬り裂いていた。
それは澄子だった。

彼女は斬られながらも懐からブルーハーツのテレカを取り出し、裏口のところに落ちていたと言って彼に手渡した。
膝から崩れ落ちた彼女に謝る事もできずに、ただうんと答えて受け取り、春子に急かされてバスに飛び乗った。
そこでようやく、車が追いかけてこれないようにし、肩掛けを被せて自分を助けてくれたのは澄子だったのと、自分は本当に彼女を好きだったんだと気付いた。
最終話
そして最終話へ続く・・・
感想
花園メリーゴーランド5巻にて完結です。
面白度☆8 恐ろしい度☆8
確かに外部には知られたくないだろう祭りかも知れませんが、監禁、傷害、強姦、その他諸々の犯罪を犯してでも守るって、閉鎖的な環境に育つと考えも一直線になってしまうんですかね。
明るみに出たら、大人たちは漏れなく犯罪者になるんでしょうけど、杓子定規に司法が村を壊滅させるとは思えないですけどね。
最終話は後日譚になっているので、澄子の生死もはっきりしますし、驚愕の真実が待っています。



































