15話
べリアルはよしのの寝顔を見ながら、彼女の両親の魂と言い争っていた。
娘に対価など支払わせず、人として幸福な未来を願う二人。
しかし彼は、両親もよしの本人さえも知らないところで、いつか魂を奪うためにずっと傍にいたのだった。

それは、よしのが母親のお腹に宿った時からだった。
神をも魅了する魂を持ったよしのをつけ狙い、両親をピッタリマークしていた彼は、同じく魂を奪おうとする他の神から守っていた。
お腹が大きい母親が階段から突き落とされた時は治療を助け、それから他のものに横取りされないようよしのの成長を近くで見守るようになった。
ただそれは、激しい夜泣きを繰り返すよしのを熟睡する両親に代わって、真の姿を見せてまであやし、おしめを替えてきれいにお尻を拭き、育児の仕方を本で勉強してまでもう一人の親として奮闘する時間の始まりだった。

人間の魂を奪う存在として似つかわしくない献身的な行為だったが、彼は自分の顔を見て笑ってくれるよしのに、既に魂を奪う存在以上の何かを抱き始めていた。
まだ言葉も喋れない相手に対し、自分の名前の意味、天界での立場、どうして神に創り出されたのか、やがて堕天使となりながらも、一人だけ美しい姿を保たされた罰を受けたことなど、理解できようもない話を絵本の読み聞かせのつもりか話して聞かせた。
すると、よしのが始めて喋った言葉が、彼の名前の「べある」になり、自分でも気づかないうちに感動を覚えていたのだった。

その後もずっと成長を見守ってきた。
歩くようになり、言葉を覚えてたどたどしい会話ができるようになった3歳の頃、ようやく夜に目覚めることもなくって夜中に相手がいらなくなると、彼は目の前から姿を消して黒い姿になり、気づかれない場所で見守り始めた。

時には他の魂を狙う相手から、ロリコンの犯罪者から、交通事故を起こさせて両親を殺した強大な山神とも直接対決をして、ボロボロになりながらもよしのを守り抜いた。

引き取られた親戚の家で犯されそうになった時は、彼らに永遠の地獄を与えると誓い、自ら死を選んだよしのの前に久しぶりに姿を現し、契約を結ばせた。
キスと愛撫で身も心も夢中にさせ、いつか心身ともに奪えればそれだけで良かったはずだった。
しかし、対価だと言ったのは嘘だった。
初めて名前を呼んで笑顔を見せてくれたときから、無償の愛を捧げて成長を見守り、多くの脅威から助けて美しい魂と命を両親に代わって守って来たのだった。
処女や魂よりも、悪魔にあるまじき心が欲しくなっていた。




































