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ベンチに腰を落ち着け、あいすくりんを食べながら夕刻の街を眺めた。

 

この街の地下にゴブリンが潜んでいて、実際に被害も出ているのに、住人にはまるで危機感や悲壮感がなく、女神官はそれが逆に異様に思えた。

著者名:蝸牛くも 引用元:ビッグガンガン2018年7号

 

 

危惧とも疑問ともつかない女神官の思いに、彼は訥々と自分のことを話し始めた。

 

 

小さい頃、一歩踏み出した先の地面が崩れて落ちて死ぬかも知れない、そんな不安を感じて歩くことに恐怖していた。

あり得なくはないが、そこまで考えて不安になっている人などまずいない。

 

それは姉や牛飼娘にも笑われたらしいが、そのうち、怖くても歩くしかないのだと割り切るようになった。

 

ただ、その子供の時に感じた恐怖は今でも続いているという。

著者名:蝸牛くも 引用元:ビッグガンガン2018年7号

 

 

あり得るかも知れないそんな状況で死ぬのは、自分だけじゃなく、今は女神官まで巻き添えにしてしまう可能性がある

 

それだけは回避したい彼は、自分のゴブリン退治に付き合う必要はないのだと言った。

 

 

あいすくりんを半分以上食べていた女神官は、そこでチェリーの赤い実を口の中に含み、以前にも言ったことを繰り返した。

著者名:蝸牛くも 引用元:ビッグガンガン2018年7号

 

 

それに彼は、二番目に多い口癖を返した。

 

 

心配してくれるのは嬉しいが、命の恩人でもある彼と中途半端に離れる気などなく、別れの選択肢を提案されるのは聞きたくなかった。

 

だから、死が怖いのは一緒だった

 

その時、哀愁漂う雰囲気に似つかわしくない槍使いが大きな声で彼を呼び、受付嬢を持ち出して彼を慌てさせようとするが、一切効果はなかった。

著者名:蝸牛くも 引用元:ビッグガンガン2018年7号

 

 

妖艶な魔法使いの魔女も一緒で、女神官と挨拶を交わす。

 

二人は彼の依頼である荷物を届けに来ただけだった。

 

それなりの冒険者だと自負している槍使いはパシリ扱いに苛立っていたが、彼が一切の照れる様子も見せずに礼をし、信頼していると言うので、文句を言うのは野暮だと思った。

 

 

それはそれとして、この荷物はこの街でも手に入りそうな代物だったが、彼のお眼鏡に適う品質ではないようだった。

 

わざわざ槍使いたちに届けさせてまで何に使うのかと言えば、ゴブリン退治以外になかった。

著者名:蝸牛くも 引用元:ビッグガンガン2018年7号

 

 

 

二人と別れたすぐ後、探索から戻ってきたエルフたちと出会った。

 

何か重要なことが分かったらしく、夕食を取りながらでもドワーフは話したかったが、食事中に仕事の話をしたくないエルフが許さない。

 

取り合えず女神官が作った料理の食後に、作戦会議を開くことになった。

 

そうなれば、女神官は食事中はゴブリンの話以外でと彼に釘を刺し、リザードマンを笑わせた。

著者名:蝸牛くも 引用元:ビッグガンガン2018年7号

 

 

彼には難しい注文だったが、仲間の意見ならば善処する必要があった。

 

 

 

今度は5人揃って石櫃の下に続く地下に潜った。

 

警戒しながら慎重に進んでいくと、ある部屋に行き着いた。

 

奥には大きな鏡が眩い光を放っているようだが、問題はその手前にいるモンスターだった。

 

大きな目玉と触手の先についた目玉がある、目玉だらけの奇妙なモンスターで、誰も性質を知らなかった。

著者名:蝸牛くも 引用元:ビッグガンガン2018年7号

 

 

しかし彼は敵がなんだろうとゴブリン退治の邪魔になるだけだと言い放ち、ブレない彼に感心したドワーフが一先ず大目玉と名づけた。

 

得体の知れない敵だが、いつもの連携で仕掛けつつ、視線を遮るのが得策だと考えた。

 

 

ドワーフが大目玉の視界を遮る役目を担うことに決まり、近接タイプの彼とリザードマンが最初に飛び出した。

 

女神官がすかさず聖壁でパーティの防御を固めようとしたその時、大目玉の眼力に狙われてしまったのだった。

著者名:蝸牛くも 引用元:ビッグガンガン2018年7号