28話
チャンピオンは負わされた傷の痛みで殺意を漲らせていた。
この痛みを与えた冒険者への憎しみだけで行動していたチャンピンは彼の姿を見るなり、巨大な棍棒を振りかぶって襲い掛かった。
彼はやっと最大の標的が来たことを冷静に確認し、ひらりとフルスイングを躱し、相手の怒りを逆なでするように動き、より自分に引き付ける。

チャンピオンが力任せの怒りのままに攻撃してくるのが分かった彼は、作戦通りにゴブリンの群れの中を縫って逃げ出す。
するとチャンピオンは仲間諸共彼を仕留めようとフルスイングし、ゴブリンは一気にバラバラに砕け散った。

敵の攻撃で敵を殺させるための彼の動きは、簡単過ぎるほどに成功した。
彼も逃げながらチャンピオンの攻撃を受けなかったゴブリンを仕留め、うまく誘導して殺戮させていく。
チャンピオンの介入で混乱も起きたが、エルフたちを狙うゴブリンはまだまだ多かった。
矢の数が圧倒的に足りないエルフは自由に射ることができず、押し込まれながらも自分の身は確実に守っていた。

ドワーフはエルフの弾幕が薄いことを咎めるが、そう言われてもエルフは矢が足りないと言い返すしかない。
ここぞという時に待機している女神官も手近に落ちているゴブリンの矢を拾い、エルフに渡して協力する。

彼も彼で逃げながらチャンピオンを誘導し、ゴブリンも倒し、弓が落ちていたら拾って鏡の前に陣取っているドワーフに投げた。
ドワーフは身軽に飛んでキャッチして中継役になり、女神官に投げ渡す。
矢筒を受け取った女神官はすぐにエルフに渡し、ナイフと蹴りでどうにか凌いでいたエルフは攻撃力を取り戻して襲い来るゴブリンを再び一息に仕留め始める。

ドワーフも舞台に上がろうとしてくるゴブリンを蹴散らしながら、リザードマンが早く鏡を外してくれることを急かす。
もう少しで外せそうな感覚の中、女神官は助けられそうなところにはすぐ駆けつけ、枠と壁の間に杖を差し込み、少しでも助けになろうとする。
小さく華奢な人間の娘が必死に力を込めているのを見せ付けられたリザードマンは、ここで我が種族の底力を見せないわけにはいかないと思い、ここで全ての力を出し切るつもりで腕に力を込めた。

そしてついに、巨大な鏡が大きく動き始めた。
チャンピオンは仲間を砕きながら彼を追いかけ続けている。
彼は砕け飛んだ瓦礫が背中に直撃してしまうが、足を弛めずに走り続ける。
エルフとドワーフが舞台に取り付こうとするゴブリンを一匹残らず仕留め続ける。
リザードマンは、とにかく全力で鏡を外そうとし続ける。

そして気合の雄叫びを上げた瞬間、女神官は杖の引っかかりが外れて尻餅をついてしまった。
乱れる呼吸を整えて上を向くと、やっと鏡が外れたのを見た。
即座に彼に声をかけ、彼は鏡面を上に掲げて全員に下に入るよう指示を出した。




































