つまり天はヤクザを殺すために火を放った。
しかもその時、社に正義がいる時間をわざと狙い、あえて大怪我をさせ、そこに優しい従姉を装って生きる気力を与える。
そうして自分に心酔させ、手駒にしたというのが町谷の知り得た情報だった。

だから最後に従弟に吐きかけた酷い言葉もそのままの意味に違いなく、道具でしかなかった従弟が感情を曝け出して真実を求めてきても鬱陶しいだけであり、久しぶりに見た従弟の素顔にすぐに気づかず、本当に誰か分からなかっただけだろうと、町谷は思っていた。
その話を聞いた三輪はより一層天への憎しみを募らせ、水野は少しだけ正義を不憫に思った。
すると真城がさも可笑しそうに笑い出し、作り話は駄目だと町谷を窘めた。
真城と町谷は確かに二人の地元に行ったが、例に漏れず閉鎖的な村ではろくに情報を集められず、あの戦いの場で明かしたところまで推察するので精一杯だった。
今の天の性悪説は、町谷が勝手に創造したものでしかなかった。
三輪は怒って掴みかかるが、町谷は鼻で笑い返し、何の確証もない話を二人が信じて気持ちを変えたように、世間が思う真実に事実かどうかなんて関係ないんだと言い返した。

だから町谷は、自分が見て何を感じるかで行動すると宣言した。
その日の帰り道、自分の感情に従った結果があの大量虐殺なのかと真城に問われた町谷は、妹を殺した奴らと観て笑っていたやつも許さないと答えた。
だが結局、その虐殺を観て笑う奴も無数に出てくるだけで、キリがないと思い知った。
だからやはり、デッドチューブそのものを潰すしかないんだと思い直したところだった。
しかし真城は、彼が全く楽しそうにしてないのに気づいていて、あれだけ多くの人間が死んだのに一度も勃起していないと指摘した。

楽しそうでなく、興奮せず、勃起しない。
彼は真城の懸念を振り払うように、妹を殺されてから人の死の撮影で興奮なんかしなくなったと言い返した。
しかし、真城は薄々気づいているのか、密かにある動画を見てシコシコオナニーしてないよね?と探りを入れた。

彼はそれも一蹴し、デッドチューブチャンネルでトップになった今、潰すチャンスだと答えた。
その日の夜も、彼はパソコン画面を食い入るように観ていた。
流していた動画は、一人の少女が複数の男に押さえつけられ、股を開かされて泣きじゃくっているものだった。

少女と男たちは知り合いらしく、少女は理性に訴えかけて止めてと懇願している。
男たちは聞く耳持たずに少女の体を弄び、処女膜を突き破った。
それを観ている視聴者たちは歓喜のコメントを垂れ流し、胸糞悪くなる言葉で画面を埋め尽くそうとしていた。

少女はか細い声で兄に助けを求めた。
もう何度聞いたか分からない妹の悲痛な叫びにまた涙が止められなくなった町谷は、天国にいるはずの花菜にもうすぐ復讐が終わると語りかけながら、股間をギュッと握り、椅子を軋ませ始めた。
翌日、町谷は飛び込んできた三輪にデッドチューブが消滅したと聞かされた。
確かにサイトが消えていて、彼のスマホからもアクセスできなくなっていた。
真城もタイミングよく部室に顔を出し、彼の不満と戸惑いを見透かしているかのように、どこかにいるだろう黒幕を血祭りに上げるところを撮りたかったの?と訊いた。

彼はそれも否定し、デッドチューブがなくなればそれでいいと答えた。
それから二ヶ月も経てば世間のデッドチューブへの関心も薄れ、あれだけの大事件も報道されることはなくなった。
世間の落ち着きと共に、映研でもない三輪が部活らしく映画でも撮ろうと言い出したその日、町谷に動画付メールが届いた。
それは、バーチャルデッドチューバー終末ヨミコから町谷に対する、デッドチューブ復活宣言動画だった。

感想
デッドチューブ43話44話でした。
天が生来の悪人だったのかは本人のみぞ知るところとなってしまいましたが、確実にいい人ではなかったので、相応しい最期だったんではないでしょうか。
そして花菜が死後レイプに遭ってからの新章突入。
この感じはいよいよ、真城が町谷に牙を剥いてくるかも知れませんね。
https://www.kuroneko0920.com/archives/52476



































