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55話

名を呼ばれたカエデはみるみる灰と化していき、思考することもできない屍になった。

 

元の姿に戻った正輝は首吊りした時のジャージ姿になり、首に食い込んだ縄の痕が痛々しく、舌をだらりと出して目を剥いていた。

 

従兄の空しい亡骸を見たユキは、かなり太ってしまっていても、間違いなく正輝だと分かった。

 

 

動揺が顔に出ないよう努める中、フグドクはこれからがお楽しみだったのにと憤慨し、名前を呼んだ誰かへの苛立ちを露わにした。

 

ユキもそれが誰なのか知りたかった。

 

正輝を知っているのなら、誰が名前を呼んだが分かれば正体も導き出せる可能性が高くなる。

 

たとえ従兄が犠牲になろうと、大金を勝ち取って現世に帰る目的が揺らぐことはない。

 

 

窓に張り付くように一番前にいたユキは、確かにこの室内から正輝の名が呼ばれたのを聞いていた。

 

位置からして、両隣の偽子とフグドクの可能性はまずないと考え、声色からも、一回戦から聴いてきた麗奈でもないだろうと当たりをつけた。

亡々死は相変わらず怯え続けていて、人を救う余裕があるようには見えないが、演技の可能性も捨てきれない。

鈴野りんも性格的に無償の人助けをしそうにないし、声色も違うような気がした。

霧霞雫とはほぼ絡んだことがなく、そもそも声をまだ聴いていないので判断のしようがない。

リヴも似たようなもので、疑わしきは候補の一人とするのが賢明だった。

著者名:鬼八頭かかし 引用元:ヤングガンガン2019年3号

 

 

そしてもう一人は、まだまだ謎が多いショーコ

 

そのショーコはユキが犯人捜しを思考しているのに気づき、音もなく背後に忍び寄っていた。

著者名:鬼八頭かかし 引用元:ヤングガンガン2019年3号

 

 

そんなことをしている場合ではないと忠告し、他に考えるべきことがあるだろうと指摘してくる。

 

ユキは自分がどこの誰か分かっているような口ぶりに焦るが、ショーコは穏やかな表情で目を細め、思い出せと促してくるだけ。

 

ユキは戸惑いながらも、自分を文字通り命を賭して助けた従兄の無残な死に様を改めて見つめた。

 

正輝がゲームに参加した理由が何だったのか考えると、自ずと思い出せるのは「守る」と言ってくれた言葉。

それが理由なら、自分と同じ幸花のためだとしか考えられない。

 

業を背負った双子の子供として生まれた者同士、それだけで辛さを共有できる被害者同士だと思えたが、正輝は父の恐怖政治に抗えなかった。

ただ正輝がずっと後悔していたのだと思えば、もしもの今を考えることができて少しは救われる気がした。

著者名:鬼八頭かかし 引用元:ヤングガンガン2019年3号

 

 

しかし、たらればを言ってももしもの世界など存在しない。

 

ショーコの言葉に自分の弱さを見つめ直したユキは、何が何でもゲームを勝ち抜いて現世に戻るためには、過去を顧みて感傷に浸る余裕はないと言い聞かせ、非情さを徹底しなければならないと戒めた。

 

 

 

こうして正輝への解剖地獄が終了すると、クロエルは中途半端にしか楽しめなかった愚痴を漏らした。

 

人間への慈悲で溢れているシロエルは、もっともっと苦しんででも生きたかっただろうにと、残酷な優しさで正輝の死を嘆いた。

 

そんな天使二人の落ち込む様を、沙羅はこれでもかと笑いたてた。

 

他者を蹴落としてでも生き残ろうとする人間の醜い部分を見て楽しむはずだったクロエルの計画が失敗したことを指摘し、カエデはそんな浅ましい考えに打ち勝ったんだと突きつける。

著者名:鬼八頭かかし 引用元:ヤングガンガン2019年3号

 

 

カエデは殺されたのではなく、自ら死を選んだ。

 

だからクロエルに負けだと宣言した。

 

 

クロエルへの尊敬で溢れているシロエルはぷんぷん怒り出して失礼な発言を諫めようとするが、クロエルは別段怒りもせずニヤつき、まさに救世主のようだと褒めさえした。

 

しかし、クロエルが今一番排除したいのがその救世主。

 

一瞬で沙羅の真横に移動したクロエルは、メサイアが誰なのかを問い質した。

著者名:鬼八頭かかし 引用元:ヤングガンガン2019年3号

 

 

本当に知らないのか、それともとぼけているのか、沙羅は初めて聞いた風に何のことを言っているのか分からないリアクションを返した。

 

人の心を見透かす目を持っているクロエルでも、メサイアについての思考だけは見抜くことができないのだとあえて明かした。

だから、沙羅がとぼけているのか本当に知らないのかも分からないという。

 

そしてそれは、「あいつら」と交わしたルールだから仕方ないともいう。

 

 

行動や発言からいかにも救世主然とした沙羅がメサイアかも知れないと思っていたとも明かすが、次の処刑の番は沙羅なので、今はそれが優先だった。

 

 

そしてクロエルの指パッチンを合図に、手術室は瞬く間に次の舞台へと様相を変え始める。

 

正輝の遺体が消え去ると、沙羅は彼の勇気を少しでも自分に分け与えて欲しいと祈った。

 

 

 

次の舞台は勝者と敗者の垣根がない実験室だった。

 

クロエルに促されたシロエルはニコニコと笑顔を絶やさず、サイズが違う二つの金属製の半球をガキンと合わせた

 

直後、眩いほどの青い光が発生した。

 

沙羅が訳の分からない現象に驚く中、フグドクは冷静に死の光のチェレンコフ光だと答えた。

著者名:鬼八頭かかし 引用元:ヤングガンガン2019年3号

 

 

チェレンコフ光とはつまり放射線

 

シロエルはプルトニウムを使うことにより、この場にいる全員に致死量の放射線を浴びせたのだった。

 

 

もちろん全員を殺すつもりはなく、沙羅以外の勝利者の肉体は正常に戻すことを約束した。

 

クロエルによれば沙羅の残り寿命はおよそ72時間

著者名:鬼八頭かかし 引用元:ヤングガンガン2019年3号

 

 

放射線に蝕まれた身体が三日後にぽっくり逝けるわけもなく、じわじわと肉体が溶け、合併症を引き起こし、あらゆる苦痛に襲われた末に壮絶な死を迎えるだろうという。

 

 

そして沙羅にも、ゲームに復帰できる条件が用意されていた。

 

予想の72時間を超えてプラス12時間を生き永らえた場合に限り、準々決勝へ進むことができる。

 

当然何もせずに長く生きることはできないが、実は他の8人の中に世界最高峰の技術を持った医者がいるのだという。

 

つまり、沙羅が生き残るには医者が自分の正体がバレる危険を冒さないとどうにもならない、人の善意に頼ったものだった。

 

 

今ここに、チェレンコフ光による崩壊地獄がスタートした。

著者名:鬼八頭かかし 引用元:ヤングガンガン2019年3号

 

 

感想

たとえ灰になっても53話54話55話でした。

口元では誰が言ったのか判別できませんが、可能性が高いのはまずユキ、麗奈、それとりんでしょうか。

まあ関係浅からぬ面々が集められているわけですから、誰でもおかしくないですが。

一体、キミと医者は誰なのか?

https://www.kuroneko0920.com/archives/55150