街の武具屋では女騎士がある商品の前で思案していた。
何とも言えない顔で買うべきかどうか悩んでいるそれは、とても防御力があるとは思えない露出たっぷりのビキニアーマーだった。

動きやすそうなのは理解できる。
鋼の強度も高そうでデザイン性もある。
しかし、ここまで腹部ががら空きだとなんでもない一撃で致命傷を負いかねない危うさを、どうしても無視できなかった。
ただ、百戦錬磨のアマゾネスが同じような恰好をして戦っているのも知っている以上、実際の戦闘で使えることが証明されている。
肌を覆う部分が少ないのなら手当もしやすく、逆に緊張感が増して反射神経が研ぎ澄まされる可能性もある。
いや、ビキニアーマーを着た上で他の防具で肌を隠せば全て解決だと思いついた。
いや、それでは本来の目的を果たすために有効ではないとすぐに理解した。
女性的魅力を披露できる程よい装備はないものかと悩み始めたその時、一番その手の話題に役立たなそうな彼がブツブツ呟いている女騎士に声をかけた。
ビキニアーマーの前で真剣に悩んでいた女騎士は自分の話題をはぐらかし、彼が何を買いに来たのか訊いて逸らすが、一瞬で端的に答えられ、またビキニアーマーの話題に戻らされて逃げ場がなくなった。
彼はビキニアーマーを部位鎧と称するが、そう呼称してもまともな防具とは彼は思えなかった。
だから女騎士は諦め、女性冒険者が結婚する難易度の高さについて話し始めた。

職業柄、女性冒険者を結婚相手に選んでくれる男は少ない。
逆に男の冒険者は等級が上がるほど男としての自信も生まれて頼もしさが増し、依頼先の村娘なんかと結婚するパターンが多いのだと言う。
彼は冒険者同士の男女で結婚しても良さそうだと言うが、女騎士が知っている限り、恋愛事情の縺れで瓦解していったパーティーがいくつかあったので、そう簡単な話ではなかった。
恋愛に絡めて考えられない彼は、強い女はただ頼もしいだけ。
仲間内の悲惨な恋愛を知ってはいても、女騎士が想いを寄せている相手は苦楽を共にしてきた一番身近な仲間だった。

だからこそ、ビキニアーマーを選択肢に入れるほど悩んでいた。
そこで彼も、あの重戦士を狙っているのかと思い至った。
ここまで話したら恥をかなぐり捨てられる気になった女騎士は、ストレートにこの露出たっぷりの装備で重戦士の気を引けそうか訊ねた。
すると彼は、意外とまともな意見を返した。
急に露出を増やす作戦が奇襲というギャップを狙っているのなら、戦闘スタイルはそのままで、プライベート時の恰好も鎧ではなく、平服にしてみれば普段のイメージではなくなるはずだとアドバイスした。
その方向性で考えていなかった女騎士はなるほどと思い、選択肢の一つにした。
そして急に変な相談をされても、いつもの調子でまじめに考えて答えを出してくれる彼に、女騎士の中でまた少し好感度が上がった。

そんな彼らしくない話題で盛り上がっていると、既に彼の注文の品を準備していた店主も話題に入ってきた。
彼が駆け出しの頃から見てきた店主は、随分他の冒険者と馴染んできたことを感慨深く思いながらも、銀等級になっても5年前と変わらず合理的なものしか買わないことをからかった。
それは今後も変わらないだろうと思っていた店主は、彼が使うだろうと思って特製のナイフを作っていた。

形状は名状し難い歪さだが、彼は興味を引かれた。
投げると回転しやすく、突き刺すより回転刃として切りつける使用法が適切。
彼は一筋縄ではいかなくなってきたゴブリンに対して新武器は有効だと考え、即決で購入した。
彼の腰には新しいアイテムが一つ増え、新しいおもちゃを買ってもらった子供のようにさっそく素振りをし始めた。

そして武具屋なのに、干し魚も注文したのだった。



































