街角の木陰の下で杭用の木材を削り始めて程なく、今日も今日とて仲良く一緒にいるドワーフとリザードマンが通りかかった。
祭り前日に彼がせっせと作っているものがどう見ても祭りの為のものではないのは明らか。
彼の答えもゴブリン用だと言うので、いつ何時でもブレなさで逆に笑顔が零れるが、杭から吸血鬼を連想して話が血生臭くなっていくと同時にやはり彼の話はゴブリンに傾いていく。
小鬼の血、屍、吸血鬼の増殖などと逸れながら腰を下ろしたドワーフも道具を広げて何かを作り始めた。
それこそ明日の祭りのために使う天灯だった。
天に浮く提灯こそこの祭りの風物詩であり、ドワーフの地元でも見れるものだという。
彼も自分の地元の祭りの名物を見れることには珍しく気分が上がるようで、天灯の謂れも心得ていた。

種族も考え方も違うリザードマンは特に深く人間の言葉が刺さり、死者への思い入れが違うものだとしても、悼む心は変わらないことを知り、感慨に耽った。
その時彼は、無残に殺された姉を思っていた。
そんな話を聞かされたドワーフは俄然ヤル気を出し、あっという間に天灯の枠組みを作り上げた。
その時、エルフが若い冒険者を引き連れてガキ大将みたく通りかかった。

エルフにかかればまだ子供と言える年齢の冒険者もわらわらと群がり、気のいいドワーフに誘われて一緒に作ることになった。
その夜、彼はエルフに誘われて二人で食事をすることになった。
エルフは席に着くなりポンポンポンと注文し、葡萄酒を勧められれば当然の如く追加した。
エルフの奢りでもテンションを上げることのない彼は何でもいいと言うので、彼女は奢り甲斐がなく、せめて兜を脱げという。
この店は冒険者御用達というわけではなく、鎧で顔まで隠している彼は明らかに目立っていた。
ただ、彼以上に目立っている二人組がいた。
それは昼間彼も見かけた、ローブで全身を覆っている明らかに不審な奴らだった。
しかし、何時でもゴブリンの襲撃に備えているからと言い返されると、もう兜を脱げなどと言えるはずもなかった。
エルフは苦笑いしながら話を変え、明日の祭りで彼が午前と午後で違う女の子とデートすることに言及した。
午前は幼馴染みで同居人の牛飼娘。
午後は仕事でお世話になっている受付嬢。
ただ彼は、遊ぶわけではないことを強調する。

それはそれとして、午前のプランを彼が何も考えていないと当たり前のように言うので呆れ、せめて牛飼娘の好みに合わせ、会話もいつものいくつかの単語を返すだけは止めておけと注意した。
人と接する際の注意をすれば彼が不器用ながらも実践するので良しとして、杭を作っていたならゴブリン退治用なのは明らかで、エルフは手伝いは必要かと訊ねた。
彼はまだいいと答えながら、財布をテーブルに出した。

しかしこの食事の払いではなく、今後、またゴブリン退治に付き合ってもらう際の前払い金だった。
エルフは納得するが突き返し、代わりにゴブリン退治以外の冒険に付き合えと申し出た。
表情が見えない彼は逡巡したようで沈黙するが、エルフの交換条件を受け入れた。

満足して食事を再開させたエルフに彼は、思い出したように一つ質問をした。
金木犀の花言葉を知っているか?と。
感想
ゴブリンスレイヤー31話32話でした。
牛飼娘も女騎士も恋絡みで動き出したことで、いよいよ恋愛パートに完全移行してきました。
他の主要女キャラと言えば女神官ですが、少し年下ですし相手と言えば彼になるでしょうから、女三つ巴の争いになるのでしょうか。
https://www.kuroneko0920.com/archives/55953



































