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79話

殺人鬼と100%シンクロした千歌は完全覚醒し、いとも容易く神崎の耳をちぎり取った。

 

神崎はボタボタ落ちる自分の血を見ながら、突然側頭部に走った激痛に呻き、憎々しげに自分の耳を持つ千歌を睨み付けた。

 

千歌はまだ微笑みを絶やさず、耳がどういうものなのか解説し始めた。

 

耳とは側頭部に皮だけでくっついている独立したパーツであり、後ろから前に引っ張れば簡単に取れるのだという。

そう、イカのエンペラのようにと。

 

神崎が、千歌にヘンリー・ルーカスの人格が移植されているなど知っているはずもないが、明らかに雰囲気が別物になっていることを気づかずにはいられなかった。

著者名:山田恵庸 引用元:ヤングマガジン2019年8号

 

 

まるで、別人格になったかのように感じていた。

 

 

神崎は確かに恐怖していたが、自分が瀕死にまで追い込んだ相手に怯えを見せるわけにはいかなかった。

 

神崎は過去に殺人をも経験したヒールレスラーとして構えを取り、全面に殺意を押し出した

 

 

プロレスはエンタメではなく闘うための手段であり、パワーと殺意をぶつけ合うものだった。

 

だから余計に、千歌の穏やかな表情が解せずに怖かった

著者名:山田恵庸 引用元:ヤングマガジン2019年8号

 

 

100%シンクロした千歌は殺人鬼のメンタルになり、殺人に一切の抵抗を感じなくなっていた。

 

300人以上を殺害したヘンリーになった千歌にとって、殺人は日常茶飯事であり、わざわざ殺意を向ける必要のないものだった

 

そして、殺しの方法に定型パターンのなかったヘンリーと同じように、千歌は瞬時に視界に捉えた全ての情報を整理し、何が殺人に使用できるかをインプットした。

 

殺意を向けて構える神崎。

梯子から降りてくる途中の小夜子。

階段、救命ボートと零れ落ちる水…

 

それらの武器に使えそうなもののない視界の中から、あっという間に7通りの殺害方法を導き出した。

著者名:山田恵庸 引用元:ヤングマガジン2019年8号

 

 

その瞬時の判断は言うならば、王手のために棋士が何十手先を読み探るのと通じるものがあった。

 

 

千歌はまた相手を煽るためか、ただ楽しみで仕方ないのか口角を上げて不気味に微笑んだ。

 

神崎はまた恐怖を感じたが気持ちで負けるわけにはいかず、脇腹に刺さったナイフを抜き取り、雄叫びを上げて威嚇した。

 

直後、また腹部を攻撃されたのだが、それはさすまたで身動きを封じられそうになっただけで、それをしてきたのは船員たちだった。

著者名:山田恵庸 引用元:ヤングマガジン2019年8号

 

 

 

千歌と小夜子は思わぬ展開に、暴力女に一方的に襲われた被害者を装うことにして、怯えた女子校生そのもののつもりで無事を喜んで抱き合った

 

船員を率いてきた船長は二人に近づき、船上では警察と同等の権限を持っている自分たちが出てきた以上、もう安心して大丈夫だと請け負った。

 

 

船員たちが出張ってきたのは、さっき小夜子が吹いた笛が救難信号用のものだったからだった。

 

千歌に渡されて吹いたに過ぎない小夜子は、ここまで計算した作戦だったのか疑問に感じたが、さすがにこの場では訊けなかった。

 

 

ともあれ、早く医務室に行きたいところだったが、今度は船員たちの野太い叫び声が響き渡った

 

船長が振り向くと同時に禿頭をがっちり掴まれてしまった。

著者名:山田恵庸 引用元:ヤングマガジン2019年8号

 

 

もちろん警察権限に歯向かったのは神崎であり、既に船員たちは海の藻屑にされてしまっていた。

 

そして神崎は船長も暗い海に放り込み、殺し合いを再スタートするためにニヤニヤしながら千歌の方を向いた。

 

だが千歌は神崎が無防備に船長の相手をしている間、放水ポンプを準備して神崎の戦闘準備が整ったと同時に激しい水流をぶち当てた

著者名:山田恵庸 引用元:ヤングマガジン2019年8号

 

 

飛び散る飛沫の中、薄く目を開けた神崎は放水ポンプで水を食らわされていることを理解した。

 

しかし、千歌がどんなつもりで放水攻撃をしているのか分からないが、この程度の水圧は海に押し出されるほどのものではないと強がった。

 

千歌はそれには答えず、海水を汲み上げている放水は傷口に染みるだろうと煽りつつ、海水が真水よりも電気を通しやすい性質であることを説明した。

 

電気というワードにハッとした神崎は、二人の頭上に放電している切れたケーブルがあることに気づいた。

 

 

ここで感電攻撃を使ったら千歌たちも巻き添えになるに違いないと思った神崎は、どうせハッタリだろうと思った。

 

そこで千歌は電気の性質をもう一つ補足説明した。

電気はより通りやすいところを選択して走ると。

 

神崎はそれで自分に浴びせられているのが海水、千歌たちの足元はタンクから漏れ出た真水なことに気づき、ダッシュした。

 

 

当然間に合うはずもなく、千歌が放水をケーブルに当てる方が速かった。

 

海水でずぶ濡れになっていた神崎は全身を焼かれ、今度こそ動きを止めた。

著者名:山田恵庸 引用元:ヤングマガジン2019年8号

 

 

 

重い頭が後ろにグラついて柵を乗り越え、彼女も自分が落とした船長たち同様、暗い海の藻屑になったのだった。

 

今度こそ勝利を確信した千歌は、一度は自分を海に落とすも結果的にサメの餌になる神崎へ、高笑いの餞を送った。

著者名:山田恵庸 引用元:ヤングマガジン2019年8号

 

 

感想

サタノファニ77話78話79話でした。

神崎が異常なレベルで打たれ強いですが、千歌が殺されることはないでしょう。

つまり、小夜子が犠牲になって怒りに任せてリミッターを外す、みたいな展開かと思ってその通りになるかと思ったら、臨機応変に普通に勝利しましたね。

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