2話
25歳の和子は指まで太くなり始めた自分のムチムチ具合に危機感を抱き始めた。
名城スタンプラリーの一箇所になっている蓮澄城跡の受付のバイトを楽だと思って始めたのはいいが、あまりに客が来なくて暇を持て余し、ここに自分が詰めている意味を問うた。
そろそろ上がる時間で、夫の晩御飯は何にしようか考え始めたその時、今日初の客がバイクに乗ってやって来た。
ただの城の跡に来る初の客を物好きがいるもんだと思っていると、受付時間ギリギリなのに気づいた若い男は慌てて駆け寄り、こんな時間ギリギリになってしまった理由を独り言ちた。

スタンプしか捺せないことにがっかりしつつも、パンフレットを読み始めると楽しそうなのがありありと伝わってくる。
テンションが上がった男は矢継ぎ早に蓮澄城跡について質問を重ねてくるが、和子が何の知識もないバイトだと打ち明けると、またあからさまに落ち込んでバイクに戻っていく。
さすがに可哀想になった和子は店じまいだけをして、自分がついて行くことで城跡を見せてあげることにした。
バイクで城巡りするのが趣味らしい大学生の彼は、この夏の間に色々巡っているらしく、ここ蓮澄城跡からの景色を城マニア目線で十分に楽しんでいるよう。
だがここ出身の和子にしてみれば、この町はどこにでもある何もないつまらない田舎町にしか映っていなかった。
でも、東京出身で自然溢れる田舎が新鮮な彼にしてみれば、蓮澄町は全てが輝いて綺麗に見えるという。
清々しいほどの褒め方にキョトンとしている和子に気づいた彼は慌てるが、外の人に褒められる経験がなくて驚いただけで、嬉しく感じているだけだと答えた。

その笑顔で景色以上に魅せられた彼は、また10日後に戻ってくることを約束して、会って欲しいと頼んだ。
和子は年下の男に求められて心が浮つき、初めて自分の町のことを話せるように勉強しておこうと考えた。
それに、彼が町を褒めてくれた時から、まるで自分が褒められた気になって鼓動が高鳴り続けていた。

しかし、家に帰ってリビングに入った瞬間、一気に盛り上がっていた気持ちが萎んだ。
夫が注意したにも関わらずまた友達を呼びまくって酒盛りをしていたのもあるが、夫は下らない自尊心を保つために太り気味の和子をネタにすることでしか笑いを取らない、妻に対するデリカシーも気遣いもないクズ男に成り下がっていたからだ。
酒を飲んでる時は、そんな横暴さがより顕著だった。
友達が帰ってからゆっくり城跡のパンフレットを見ようとしても、気分よく飲めた夫は酒盛りの余韻に任せて無理やりヤろうとしてくる、自分の欲望だけに忠実な男だった。

後日、田舎町の図書館では浮きまくっている露出たっぷりの服装をしていた和子は、あの時の彼が来た時のために勉強していることにトキメイていた。
借りた本を家でも読んでいると、夫はまた自分勝手に上げた飲み友達から笑いを取るため、和子を貶すことしかできない。
だから和子はいい加減我慢できなくなったが、穏やかに夫の笑いのセンスを責めた。

そのたった一言で切れた夫の言葉で、夫は妻を見下すことでしか自尊心を保てない小さな男だとはっきり理解できてしまった。
そして10日後。
大学生の彼は約束通りにスタンプラリー受付所に来てくれた。
ヘルメットを取って挨拶してくれた瞬間から舞い上がった和子は、嬉々として彼を案内し、仕入れたての情報をどんどん説明していく。
自分が好きなものを知ってくれようとする努力。
誰かのために頑張れることの喜び。
それらで心が通い合った二人は、彼の方から人妻の腰に手を回して強引に唇を奪った。
指輪をしていなかった和子は受付の詰め所に誘い、狭い中で必然的に彼の膝に乗らなければならなくなり、たるみ始めているお腹を見られるのを恥ずかしがった。

しかし彼にとって、和子と出会えたこの町も彼女自身も、輝いて見え…



































