22話
晴れ渡る空に笑顔を零した牛飼娘。
心地よい風と温かい太陽の光に洗濯物がはためいていた。

牛飼娘が次に手にしたのは、血や汗や埃や泥に塗れている彼のシャツで、納屋に入ってこっそり回収してきたものだった。
桶に張った水に浸し、うんしょうんしょと精一杯足で踏み踏み、あっと言う間に水がどす黒く変わっていけば、仕上げは綺麗な水でざぶざぶ一すすぎ。
するとあれだけ汚れていた染みもすっかりキレイになり、牛飼娘はまた心からの笑顔を零した。

今は恋心と言うよりも身だしなみに気を付けて欲しい姉のような気分。
肌着はこれでいいとしても、さすがに鎧まで勝手に手入れするのは気が引けた。
汚れたままにしているのも、あれはあれでちゃんと意味があるかも知れない。
今は冒険者として日々仕事をこなしている彼だが、牛飼娘の中では5年前の少年の頃の方のイメージがまだ強く、鎧尽くめの彼を簡単に重ね合わせることができないでいた。
それもいつかは、時間が解決してくれるかも知れない。
そう思って桶を見ると、もう洗濯物はなくなっていた。
やるべき仕事はもうないのに、時間はまだ日が高いお昼に差し掛かったばかり。
家畜の世話をしようにも四六時中見ている必要はないし、力仕事は伯父さんがほとんどやらせてくれようとしない。
心配されすぎなのも不自由なものだと思いつつ、少し早くても晩御飯の支度を進めておくことに決めた。
使った桶を忘れずしまい、できれば二人ともが美味しいと思ってくれるものがいいが、彼の好みはまだ分からない。
ただ、愛情を込めた料理は準備からワクワクとドキドキがこみ上げた。

その頃彼は、武具屋に行って手に入れた指輪の買い取りを頼んだが、断られたところだった。
店に入るなり彼はまず、装備の補充を頼んでいた。
店主は品物を揃えていくうち、戦士ではなくもっと野性味溢れる野伏や斥候のようだと感じるが、それも全てにおいて器用に物を扱えるからだろうとも思った。
そして装備を補充した後に彼が依頼したのが、指輪の買い取りだった。
石の中が燃えている指輪を見た店主が買い取りを拒否した理由は、未鑑定でどんな代物か分からないからだった。

この店でも鑑定はやっているが、引き取り額の半分が料金になるので高価な物の場合は特に割に合わないシステムになっていた。
魔法の指輪ともなればそれだけで高額が予想されるが、彼は払えるくらいの蓄えはあると答えた。
しかし、ゴブリン退治で稼いできた金には使う予定があり、指輪の鑑定で大きく減らしてしまうわけにはいかなかった。

ここでの鑑定を諦めた彼ができることは、手っ取り早く自分で嵌めて効果を確かめることだが、それは師匠にするなときつく言われていることだった。
彼が諦めて早々に帰ろうとするので、店主は親切心を芽生えさせ、鑑定ができる冒険者に頼むという一つの案を教えた。
他の冒険者と繰り返して彼は「分かった」と答えたが、店主からは真に理解しているのか怪しく写った。
買い取ってもらうには鑑定が必須で、それをできるのが冒険者の中にいるかも知れない。
そこだけきっちり理解していた彼はギルドに足を向けるが、誰ができるのかまではさっぱり分からなかった。




































