23話
魔女に教えられた通り、彼は町外れの小川の傍に赴いた。
そこには水車をつけてこじんまりとした家が建っていた。
牧場とは逆方向にあるせいで、煙突から煙が出ているこんな家があるなんて知らなかった彼は、地形の把握が行き届いていなかったことを反省しつつ、戸を叩いて声をかけた。
応答はないが、煙突から煙が出ているのだから留守ではないはず。
彼がもう一度戸を叩いて声をかけると、中から億劫そうな声で上がってくれて構わないと返ってきた。
彼が遠慮なく中に入ると、薄暗い上に本や色々な物がうず高く積まれていて、余計に陰鬱さを増長させている雰囲気だった。
ブツブツと独り言が聞こえてくる方に進んでいくと、机の前で怪しげな何者かが熱心に思案していた。

それでも彼は構わず、もう一度指輪鑑定の依頼に来たと伝えた。
何者かは返事をするがまともに相手をせず前を向いたまま。
だが指輪と続けて呟くと急に立ち上がり、机の上の物が散らばるのも構わず掴みかかるように彼に向き直った。
フードが外れて見えた顔は眼鏡が似合う知的な美人だった。

指輪というだけで特定の「灯」しか思い浮かべていない彼女は取り乱すがすぐに落ち着き、まずは現物を見せて欲しいと頼んできた。
一秒でも早く見たいのを隠さない彼女は、彼の掌の上の指輪に目を凝らし、一人納得し始める。
手に取って仔細に眺め、石の中で火が燃えているのを確かめると何やら呪文を唱え始めた。
すると石がバチっと光り輝いて中から線香花火のようにスパークを放ち、薄暗い部屋を眩く照らし出した。

彼女は瞬きせず見続け、程なくスパークは収束して石は眩きを失っていった。
すべきことをしたらしい彼女は目を擦りながら、どこで手に入れたのか訊ねた。
彼はいつものように淡々と、ゴブリンの巣の肥溜めの中から発見したと答えた。
すると彼女はまた取り乱し、ゴブリンの巣ということが信じられないようだったが、すぐに涙を流すほど大笑いし始めて、まさかの発見場所に見つけられなかったことに納得した。

彼もゴブリンの巣からこんな珍しい指輪が見つかった驚きには共感しつつ、気になる指輪の効果を訊ねた。
彼女は短いワンピースから伸びる白く艶めかしい足を組みながら、自分にとっては価値のあるものだという。
彼にとってはどこでも呼吸ができるブリージング程度の効果しか発揮しないだろうと伝え、金はいくらでも払うから是非売って欲しいと持ち掛けた。
いや、金とは言わず、自分の身体で払うと言わんばかりに巨乳をアピールして上目遣いでいやらしく微笑み、彼の返答を待った。

金以外でもいいと分かった彼はもちろん、彼女の身体など望まず、ゴブリン退治に使える物を望んだ。
予想だにしない答えに彼女がぽかんとすると、もう一度繰り返した。
すると彼女は大ウケしてまた涙を流すほど大笑いし始め、笑い転げだす。
そこで彼がトドメの林檎酒を差し出すと、本の塔に倒れても笑いが止められなくなり、埃を巻きあげた。
笑いのツボが特殊で望む物のために色仕掛けさえ厭わない彼女、アークメイジとの騒がしい初対面だった。

感想
ゴブリンスレイヤー外伝イヤーワン21話22話23話でした。
新章開幕でさっそく凌辱レイプから始まり、彼が憎しみを込めて駆逐するゴブスレらしい展開でした。
今回手に入れた指輪がどう物語に絡んでくるのか、アークメイジとどんな関係性を作っていくのか楽しみです。
https://www.kuroneko0920.com/archives/58199



































