世界中で多くの才能を持つ人間の傍で時間を費やしてきた蓮華は、経験則から数十万人に一人程度しか有用な才能を開花させる人間はいないと知った。
そして、彼らに共通するのはおしなべて悲劇的な人生を送っていた。
その悲劇を見ることこそ、蓮華の中で至福の楽しみだった。
稀有な才能を持つ人間は自然と悲劇を引き寄せ、苦悩し、孤独を纏い、人知れず闘って抗おうとする。

作り物ではない究極のドラマだから傍で見れることに楽しみを感じていた蓮華は、未だかつてない才能を持つ人間の悲劇を見ることを夢見ていた。
しかしその思いは、木皿儀千佳に出会ったことで次第に薄れていった。
初対面は年端もいかない少女だったらぎ姉は、着物をきっちり着込んで凛とした空気を纏い、どこか浮世離れしていた。

挨拶の言葉も礼儀正しく、躾や教育が行き届いているのが十分に伝わった。
らぎ姉にも才能を感じたがそれ以上に、最早子供を望めなくなっていた蓮華は母性を刺激されたのか、少女の傍にいられるだけで幸福を感じるようになった。
少女がやがて自分の身長を越していく間、越してからも色々な想いを共感して時間を過ごし、幸せを積み重ね、一生を捧げると誓った。

そして保菌者騒動に巻き込まれ、川内崩壊後の高層ビルに取り残された時、ついに保菌者に追い詰められていた蓮華はここでらぎ姉と別れることを覚悟した。
しかし、そこに現れ圧倒的な戦力で助けてくれたのが神城だった。
蓮華はかつてない才能を持つ神城の悲劇に興味を持つより、悲劇的な最期から救ってくれた彼に恋をしたのだった。

そんなことを考えながら疾走し続けた蓮華は、ついに無線の電波が妨害されるエリアに辿り着いた。
神城たちがいるとしたらこの先の可能性が高いが、罠が仕掛けられている可能性も高かった。
135話
無線が妨害されているエリアに入った蓮華は、緊張感をより強くした。
この先に神城や自衛隊員たちがいるのは間違いなく、最悪の場合は既に暗殺が完了している。
そこで、蓮華は自分に妨害が行われるかどうかを一番懸念していた。
妨害がないよりは、むしろあって欲しい。
なぜなら、妨害がない場合は暗殺が完全に終了して敵側がもう妨害する必要もないと考えているからだった。
果たしてその懸念は現実として、蓮華の視界に入った。

駆け寄った蓮華は一番近い隊員の脈を取ったが完全に止まっていて、蘇生の見込みがないことを知った。
何人もが重なり合って事切れている自衛隊員。
誰か生存者はいないかと見まわしたその時、室内で仰向けに倒れている淀川も発見してしまった蓮華は脈を取るまでもなく死んでいることを悟り、顔を青ざめさせた。
暗殺は完了し、自分への妨害をする必要もないのだと考えるしかなかった。




































