ファンタジックな夜空の光景と女神官の舞いを楽しみ、二人はまた螺旋階段を戻り始めた。
薄暗い足元に受付嬢が足を踏み外しそうなると、彼はサッと支え、今日の休日は悪くなかったと感謝を伝えた。
ぶっきらぼうな物言いでも受付嬢にとっては小躍りしたくなるほどの喜びで、いつもの受付嬢らしく、どういたしましてと言った風に感謝を受け取った。
程なく出入口について受付嬢がドアノブに手をかけたが、なぜかかけた覚えのない鍵がかかっていて開かなかった。
おかしいと思った受付嬢が振り返った直後、不穏な気配を察した彼が彼女を力任せに引き倒した。
直後、受付嬢の眼前を毒塗りのナイフが飛び過ぎていった。

彼が壁際に避難してテーブルを盾にすると、追い打ちのナイフが突き刺さった。
突然の襲撃にゴブリンの侵入かと思った彼がランタンを蹴り滑らせると、2階にいた襲撃者の影が浮かび上がった。
襲撃者は観念して近接戦闘に切り替え、身軽に飛び上がり襲いかかってきた。

体躯の通りに小回りが利く素早いナイフの攻撃を繰り出してくるが、彼は盾でいなして弾き、隙だらけの脇腹に斬りつけようとした。
しかし、袖に隠していたナイフで防がれ、また距離を取られる。
毒塗の短剣を使いこなす技量や身のこなし。
彼もさすがにゴブリンではないと気づいた。

受付嬢がまさかダークエルフかと思って声を上げた直後、襲撃者はまた毒塗のナイフを投げた。
彼はもちろん盾で防いだがそれが囮と分かっていたので、膝を狙ってきたナイフも抜かりなく叩き落とした。
しかしそれに気を取られて黒く塗られたダーツの矢に気づかず、柔らかい革鎧部分に食らってしまう。

彼はしてやられたと思ったと同時に、背中から豪快に倒れてしまった。
彼が死んだと思った受付嬢が「嘘…」と呟いた直後、襲撃者はその言葉に激昂して怒鳴り、弱いゴブリン狩りばかりで銀等級になれた運だけ野郎と罵りながら、彼を蹴りつけていく。
受付嬢は飛び出して止めるよう叫ぶが、彼に個人的な恨みを抱いているらしい襲撃者は、女を侍らせている、ギルド職員とも通じて不正をしていると決めつけ、憎悪に満ちた目で受付嬢を睨みつけた。
すると襲われた理由を知った彼はいつものように「そうか」と言い返し、襲撃者の脇腹から剣を突き入れた。
襲撃者はまさかの反撃に何もできず、激痛に声も出ず、程なく事切れた。
革鎧の下に鎖帷子を着こんでいた彼に、ダーツの矢など全く届いていなかったのだ。
死んだふりをしたのも彼なりに最善の勝ち筋だと思った上での判断だったが、本当に彼が死んだと思った受付嬢は安堵したことで恐怖がぶり返し、涙を流して敵をだますなら味方からの行動を責めた。

さすがの彼も、この手は二度と使わないと約束するしかなかった。



































