小さなゴブリンを突き刺したまま大きく半円を描いたそれは、当然また戻って来た。
戻ってくることを咄嗟に理解できないバカはせっかく直撃を免れたのに身体を起こし、揺れ戻りで貫かれた。
何とか生き残った奴らが森の中に逃げた方には、女神官がたった一人で堂々と待ち構え、襲い来る奴らに沈黙を唱えた。
そんなことに構わず、ゴブリンは性欲のままに下卑た舌を躍動させた。

すると、女神官の後ろから何本もの矢が飛び出し、襲いかかって来たゴブリンを一撃必殺で貫いた。
だがそれでも、仲間と本当の盾を盾にした一匹が混戦から飛び出した。
しかし、それも想定済みだった女神官は珍しく武器を振り下ろし、見事に頭に叩きつけた。
非力な一撃は致命傷にならなかったが、念のために二本の矢が止めを刺した。

ギリギリの緊張感とたった一打で呼吸が乱れた女神官に寄り添って頭を抱いたエルフは、髪をわしゃわしゃやりながら労いつつ、囮を指示した彼に怒ってもいいんだと促すが、女神官は責任感強く苦笑いを返し、彼だから仕方ないとあきらめの言葉を返した。
その頃男性陣は、大きな落とし穴に落ちて蠢いている奴らを逃がさず、確実に止めを刺そうとしていた。
盾代わりの土嚢に身を隠して反撃を避けつつ、投げナイフやシンプルな投石で一匹ずつ数を減らしていく。
ドワーフはこっち側にエルフがいた方が適任だっただろうと言うが、数が多く、多少の持久戦を覚悟しなければいけない状況で、防御力がないエルフでは術の反撃を受けた際にリスクが高いと説明した。
そうくれば、ドワーフは薄くて硬そうな胸をからかった。
現状、各方角から15匹ずつの小隊として計60匹。
何の策もなく突っ込んできてるようにしか見えなくても、何かしらの勝機を見出して指揮している奴がいると考えるのが賢明だった。
東西の30匹を仕留めた彼は、女神官たちと合流して牧場がある南の方で待ち構えることにした。
敵がまだ奇襲をかける側だと思っているうちに、逃さず皆殺しにするつもりだった。

雨が降り出した外を窓から眺めていた牛飼娘は、彼が持って帰ってきて飼うことになったカナリヤに目を移し、答えが返ってくることのない質問で気を紛らわせようとした。
今日は午前中だけおめかししてデートをし、十分に楽しんだはずだった。
しかし、一度楽しい時間を過ごしたら際限なく求める自分に気づき、やり場のない望みに翻弄されるようだった。
その時、雷が遠くで鳴っている音に気づいてまた外を見た瞬間、彼がちょうど通りかかって驚いた。
朝には戻ると約束した彼は、帰ったらシチューが食べたいとおねだりした。
それにまた驚かされた牛飼娘だったが、朝からシチューでもいいのか再確認すると彼が頼むと言うので、嬉々として受け入れた。

さっきまでのやるせない想いは一瞬で消え去り、嵐の中をまた出かけていく彼にエールを送り、寝坊も風邪を引くのもダメだと言い含めた。
ただ、なぜ樽を転がしていたのか理由は訊けなかった。




































