38話
魔神王の残党は悔しがっていた。
水の街での儀式を何者かに邪魔され、何もうまくいかない現状を嘆いていた。
従えているゴブリン共でまた何かしようと考えたその時、ふっと託宣が舞い降りた。

混沌にも神々がいるのだと信じ、必ず使命を果たすと誓った。
そして現在、彼が樽を運んでいるところにドワーフがやって来て、窯に火をくべたことを報告した。
エルフによればゴブリンが来るまでそう時間はないらしく、彼はドワーフに風勢を強めるよう指示した。
リザードマンは竜牙兵二体を作り出し、二体用の武器を納屋にしまってある武具から借りた。
女神官は薄着のまま雨ざらし状態でも彼が寒くないか心配するが、彼は不器用に心配し返し、奇跡を使える回数が残り二回だと把握した。

彼が樽の蓋を開けると、中からとんでもない異臭が溢れ出してきた。
エルフが鼻を押さえるそこには、干し魚が詰め込まれていた。
女神官はすぐにやるべきことを察して掴み上げ、燻製小屋に入って吊るす役を買って出た。
彼も素直に任せると、ドワーフは抜かりなく最年長のエルフとは違って気遣ってやる必要があることをからかった。

彼は頼んだものを納屋から持って来てくれたリザードマンに訊かれ、いつも通りに燻すつもりだと答えた。
燻製小屋の煙突からは、雷雲のような黒煙が上がっていた。
ゴブリンを率いる黒幕は託宣の後、朽ち果てかけたある遺跡に向かい、秩序を砕く呪物というものを探した。
最奥の祭壇に捧げられていたそれからは禍々しいオーラが放たれ、黒幕はこれこそ勝利を手繰り寄せる一本だと感じた。
だがそれを手に入れようとしたその時、邪魔する者たちが現れた。
魔法で先制攻撃を仕掛けた冒険者パーティは確かな実力を備えた者たちで、ダークエルフが呪物を手にするのを阻もうとした。

結果、競り勝ったのは混沌勢の方だった。
ダークエルフも相当に追い込まれたが、愛らしいゴブリンたちが勇敢な女たちにしっかり止めを刺し、ただの血肉の塊にしてくれたことに高笑いすることができた。

そして指先が燃えるおぞましい片腕を手に入れたのだった。


































