それを肌身離さず持ったダークエルフは嵐の中、収穫祭を狙って街に侵攻していた。
ゴブリンに冒険者の影があると報告されても目指すは街だけだと考えた。
しかし、ここに来てヘカトンケイルを呼び起こす作戦に大きな支障を来している気がしてならなくなってきた。

ヘカトンケイルさえ復活させれば混沌の勝利は揺るぎなく、自分の名が歴史に刻まれるだろうと思うと興奮して仕方なかった。
だが、用意した策がことごとく打ち破られている気がしていた。
東西北に送り込んだ部隊と連絡が取れなくなり、雇ったレーアの動きもなく、生贄の女たちも悉く奪われた。
そもそも呪物を手に入れたこと自体が間違いなのかもと思うと、言い知れない恐怖がこみ上げた。
それでも、今更引き下がる道は残されていなかった。
ここにいるゴブリンも全て囮にして、ヘカトンケイルを目覚めさせなければならなかった。
その時、ダークエルフたちは漂ってくる異臭に咽始めた。
毒煙かと思い、今更報告された冒険者を忌々しく思った直後、黒煙に紛れて竜牙兵が先陣を切った。

罠はないと言った彼だったが、屁理屈にも聞こえるように方法はいくらでもあるんだとドワーフに言い返した。
ふてぶてしささえ感じる彼でも、だからどんな場面でも切り抜ける策を弄するからこそ、自分たちのリーダー足り得るんだとエルフは思った。
そうやって認めつつも、やはり経験は自分の方が上だと思い一人でほくそ笑んだが、冒険でこんな悪臭を発する作戦はダメだと釘を刺した。
彼が残念そうにするのを見て、複雑な微笑ましさを感じた女神官は、黒煙の先からピリつくような殺気を感じてすぐに動いた。
彼らの前に出てすぐ地母神への祈りを捧げるより早く、ダークエルフは唱え終わった。

竜牙兵を吹き飛ばして一直線に向かってくる強力な魔法攻撃。
直撃したのを見たダークエルフは二ヤリとしたが、女神官の聖壁で彼らは無傷だった。

強力な一撃を防いだ女神官も無傷ではあったが、緊張の弛緩からかふっと身体から力が抜けて倒れ込んだ。
彼がサッと抱えると、無傷なのを伝えたが、奇跡は後一回しか使えなくなった。
それで十分だと答えた彼は、もっと燻して弱らせてから突撃する予定を狂わされたが、背後に牧場が控えている以上、一匹でも見逃すつもりはなかった。
ドワーフの見立てでは、連発できる術ではないはず。
リザードマンが知っている格言を参考にし、罠かも知れなくても踏み潰す勢いで真正面から突っ込むことを選んだ。
要だと言われて信頼を置かれた女神官は、覇気のある声で返事をした。

そして、彼の号令がかけられた。
感想
ゴブリンスレイヤー37話38話でした。
暗い森の中での戦闘で敵勢力のおよそ半分ほど削れたようですが、ゴブリンを率いているのが何者なのか、一筋縄ではいかなそうな雰囲気でした。
https://www.kuroneko0920.com/archives/62211



































