彼は紗月たちのためにも諦められないと拒絶するが、それさえも冷静に矛盾を指摘された。
命を懸けて守りたい人のために生きる。
聞こえはいいが、やろうとしていることは大切な人の死を見ないために死に急いでいるだけだと。

彼は否定しきれず、高校生の彼は可能な限り苦しまない方法を探そうと促した。
スッと汗も涙も引いた彼は黙り込み、高校生の自分の正しさを認めた。
優しく正しく、自分が傷つかない方法を最優先している。
しかし、もうただの高校生じゃない自分にその理屈は通らないと答えた。
既に色々まともな人の道を踏み外し始めている彼は、こんな世界でもいいことがあるんだと囁いた。
正しさを後回しにすれば、美少女と3股できるのだから。

死んでも守ると決めた大切な人が3人いることはそれだけで幸せなんだと。
恐怖心が幸せを凌駕しかけていることを甘んじて認めながらも、人殺しの外道になったこの世界でも人生が続くのなら、掴める未来と幸せがあると言い切った。
なぜなら、人を殺したことで完全に吹っ切れたからだった。
殺すべき敵を殺した先で、犯人も殺して保菌者騒動を収束させる決意が決まったのだった。

一線を越えたことで勝つつもりになれた彼は、高木が言い残した言葉から、香里と紗月の協力、何より秋保脱出について考えを巡らせ始めた。
すると、あの頃の記憶が蘇ったかのようにもう一人の彼がいつものように教室に入って来た。
クラスメイトでざわつく教室の中、彼は高木と挨拶し、隣のらぎ姉と何気ない会話を始める。
まだきららとも出会っておらず、紗月は上級生の教室でも構わず会いに来る。

最早なくなったこの頃の世界も楽しかったと思いを共有した彼は、思い出の自分に感謝して別れを告げた。
現実に戻って来た彼は頭から流れる血を拭い、ナイフを高らかに掲げて勝利の笑いを発した。
不安そうな顔で見守っていた仲間たちに殊更余裕ぶって見せ、必ず脱出できると改めて言い切った。

松谷たちはまた彼の言葉に乗せられ、不安を打ち消した。
次の標的のところへ向かい始めると、彼は紗月に守り切ると囁いた。
彼がこの殺人で変化したのを悟った紗月は、彼に愛されていることと過去の彼がもういないことだけを理解した。






























