147話
明石が考えたホテル駐車場の保菌者掃討作戦は上々の成果を上げていた。
落ち着きを取り戻した精鋭部隊は声と動きを揃えて巨大化しつつある保菌者を一斉射撃で撃ち殺す。
流れ弾の被害を受けないため、グループ分けされた避難者たちは、無駄なく動いて射線を作っていく。
集中砲火が終わればすぐに怪我人や流れ弾被害がないか声をかけ合い、重機で保菌者を所定の場所に運んでいく。
札を持つ役も押し付け合いなどせずに交代しながら、バスに乗る順番が後回しになっても苛立たずにお互いを励まし合っていた。
札持ちを交代した男はそんな状況を維持できていることを不思議がるが、交代してもらった男は戦闘力も勇気もない自分たちがルールを守るだけで大勢が助かるのだから、その考えを共有できているからだろうという。

作られたルールに従っているだけでも、人助けに繋がっている、困難に立ち向かっている、戦えているんだと交代してもらった男は鼓舞した。
危険の中でこうして助け合えることこそ幸せだと語る、交代してもらった男。

直後、その男が急に倒れてピクピクと震え出した。
いいことを言ってピリピリした空気を和らげた直後の残酷なるタイミングに、交代した男は青ざめてしまうが、保菌者に変わろうとする男は間もなく殺されると分かっても声を大に合図を送れと指示した。
男がそこまで覚悟できているのは、人助けの末に人殺しになってしまいたくなかったからだった。
そのグループは非情な選択にも躊躇わずに明石たちに合図を送り、できるだけ多くの命を助けるために頑張り続けることにした。

人々がグループごとに移動し始めて射線が作られると、精鋭部隊が銃を抱えて保菌者の前に陣取っていく。
その時、晴輝が明石たちがいるベランダに到着し、ここまでに見た避難者たちの生気を宿した目と素晴らしい作戦を褒めちぎり、最小の犠牲で脱出できそうだと笑顔を零す。
しかし、明石は同意しかねた。
まだ彼は把握していなかったが、この作戦の集中砲火で保菌者を仕留めていくうちに、新たな保菌者は集中砲火に耐えられそうな進化形態を取り始めていたのだ。
筋骨隆々の巨人タイプや肉厚防御で凌ごうとする進化を彼女たちは脅威に感じていたが、彼が思うにそれは進化情報のやり取りだった。

犯人がばら撒いた進化情報で繋がった避難者たちが何かしなくても、どうすれば集中砲火から生き残れるかという考えが蓄積され、次に保菌者になった誰かにそれが現れてしまうのだ。
殺虫剤に害虫が耐性を持っていくようなもので、そのうち集中砲火を凌駕する何らかの対策を持った保菌者が生まれる可能性は十分にある。
そんな話をしているうちにさっきの男が保菌者に変わり切ってしまうが、精鋭部隊は仕留め切れないでいた。
新たな保菌者は全身を爪で覆って銃弾を弾き返すという、絶対防御の身体に進化していた。




































