30話
廃坑の主、ワーロック。
ゴブリンとは比較にならない強敵出現に、冷静に状況を分析した先生は、どんな手を持っているか分からないし、相手の棲み処では地の利もある。
ここは機を見て撤退するのが賢明だと判断するが、奇襲を仕掛けてきた以上容易く逃げられないと見越し、術を打ち消す抗魔を自分たちにかけて守りを堅め、相手の攻撃直後の隙に走る作戦を立てた。
ただ先生の残り回数は一回で、失敗は許されなかった。
そうと決まれば戦士と武闘家娘が前に出るも、ワーロックは姿そのままの影を増やして攪乱してきた。

本物は一体他は単なる影だが、見た目では全く分からない。
闇雲に二人が飛び込めなくなったその時、エルフが投射機で矢を放ち、遠距離攻撃で一つの影を打ち消した。
このままエルフの攻撃も合わせて難なく攻略できそうな雰囲気になった直後、入り口側からゴブリンの群れが急襲してきた。
不意を突かれたエルフのがら空きの背中にゴブリンの凶刃が振り下ろされそうになるが、ドワーフ娘が間に合い、的確に喉を割いて効率的に二体を仕留めた。

しかし、一体が仲間の背後から突き出した槍にかすり傷を負わされてしまう。
そいつも難なく返り討ちにし、またすぐにエルフと軽口を叩き合ったのはいいが、刃に塗られた毒が身体に回ったドワーフ娘はあえなく倒れてしまうのだった。
脂汗が吹き出し、呼吸が乱れ、ついに弱音を漏らしたドワーフ娘。
先生が素早く残りのゴブリンの相手を引き受けると、エルフは解毒の祈りを行い始めた。
ここでも、種族間のいがみ合いを口にする二人だが、エルフは違う種族であると同時に友だと思っていることをさらりと口にした。

ワーロックを相手にしている戦士と武闘家娘。
戦士が術を使うよう誘い、その動作をしっかり観察した武闘家娘が本物を狙い打つ作戦にした。
戦士が次々と影を切り裂いていく間、武闘家娘は自分も皆に負けないくらいの頑張りを見せたいと意気込み、本物しか術を使えないという先生のアドバイスに従い、残り一体になったワーロックが術を使う仕草を見逃さず、渾身の蹴りをぶち込んだ。
しかし、その一体も影だった。
訳が分からず動きを止めた武闘家娘の背後から、隠れ潜んでいた本物がヌッと姿を現した。

気配と戦士の声で反射的に飛びすさんだ武闘家娘は、振り抜かれた凶刃による致命傷はなんとか免れたが、細い肩から血が噴き出した。
武闘家娘を退けたワーロックが呪文詠唱を開始するのと同時に、先生も詠唱開始。
ほぼ同時に発動した吹雪と抗魔。
戦士は圧倒的な風圧に押し返されそうになるが、ここで自分がやらねば自分だけじゃなく、また仲間を失ってしまうのはもう御免だと思い、気合で突き進んだ。
そして間合いまで詰めると、ワーロックの腕を斬り落として術を強制的に止めてやった。
絶叫するワーロック。
仲間たちもしっかり動けるほど、大した吹雪の威力ではなかった様子。
それでも彼らはワーロックの奥の手の可能性を見越し、最悪を回避するために撤退したのだった。
廃坑から飛び出し、かなり離れたところでようやく腰を落ち着けた一行。
深手ではないが武闘家娘に傷を負わせたことを悔やむ戦士だが、彼女はそれぞれが役割を持ってやるべきことをやった結果で、一人が謝る必要なんてないと諭した。
何と言っても、彼女はもう戦士をパーティーの一員だと思っていた。

しかし戦士は、ただ臨時で同行しているだけだとにべもない答えを返した。
するとまだグッタリしていたドワーフ娘が荒ぶり、エルフも追随し、武闘家娘は涙を溜め、先生はもう一人戦力が欲しいと冷静に締める。
一気に4人から圧力をかけられた戦士は断り切れない形で受け入れたが、新しい仲間と共に無事に帰る道中では、自然と笑顔が零れた。



































