40話
ヒュームに殺すなどと侮られたダークエルフは激昂し、ヘカトンケイルの腕を自在に伸ばして襲いかかった。
彼はその間をすり抜けて距離を詰めるが、相手もリーチの長さの利で盾を切り刻んでいく。
彼は盾を犠牲にしながらも突進を止めず、捨て身の体で剣を握る手を精一杯伸ばした。
しかしそれは空を切り、まるで届かない。
高笑いしたダークエルフは、彼の戦いを見て、精々五位か六位の翠玉程度だろうと嘲笑った。
彼は冷静にその見立てを否定し、女神官をぶっきらぼうにアレ呼ばわりし、黒曜級だと訂正した。
直後、彼の背後から眩い光が放たれた。

聖光。
切り札で温存されていた女神官は絶好のタイミングを逃さずにホーリーライトを放ち、ダークエルフの目を眩ませることに成功した。

ダークエルフが怯んだ瞬間を逃さず、彼も袈裟斬りに切り裂いた。
まさかの深手を負わされたダークエルフは血を吐き散らしながら距離を取り、思いもしなかった状況にまたまた激昂し、予定していた街の破壊だけでは済ますまいと、全員ゴブリンのエサにして、女共は死を願うほどの目に遭わせてやると吠えた。
だが威勢のいい声も、また血反吐を吐き散らして中途半端に終わった。

そこまでの深手ではないと思ったダークエルフが混乱したその時、彼はシンプルに毒だと教えてやった。
しかもその毒は、彼を亡き者にせんと逆恨みの憎悪を乗せて闇討ちしてきたレーアが使っていたものだった。
やられっぱなしになったダークエルフは起死回生の一発をと、さっきの強力な一発を唱え始めた。
最後のゴブリンを始末したドワーフたちも危険な気配を感じ取り、女神官が聖壁を発動しようとするが、もう力を使い果たし、立つこともままならなくなっていた。
彼がすかさず追い打ちをかけるが、まだ動けるダークエルフは飛び下がり、エルフの矢も容易く止められてしまう。
矢避けの加護。
それがある限りエルフの攻撃は防がれ続けるので、エルフは矢避けの加護をどうにかしなければならないと彼に伝えた。
彼が落ち着いて矢避けとは何か訊くので、エルフは祖父から聞いた話をできるだけそのままの言葉で諳んじた。
矢避けはつまり、弓矢に関する攻撃だけを防ぐ。
文言がそうとしか解釈できないのが分かった彼は、ダークエルフが一撃必殺の分解を放つよりギリギリ早く、手に入れたばかりの歪な短剣を投げ、見事に腕を斬り落としたのだった。

腕が飛ばされ呪物を手放したダークエルフからヘカトンケイルの腕は消え去り、ぬかるんだ地面に落ちた。
矢避けの加護の範囲外である短剣を拾った彼が呪物を踏み砕くと、阻まれることのなくなったエルフは悠々と矢を射り、ダークエルフの喉を貫いた。

ことごとく野望を打ち破られたダークエルフは、彼らが水の街の計画も砕いた勇者の一行だと勘違いし、敗北もむべなるかなと感じた。
それも彼は冷静に、自分はゴブリンスレイヤーだと訂正した。
こうして街の危機は、彼らだけで密かに食い止められたのだった。



































